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August 32nd on Earth(英題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

August 32nd on Earth(英題)(1998年製作の映画)
3.5
【ドゥニ・ヴィルヌーヴ長編デビュー作】
MUBIで『メッセージ』、『ブレードランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督長編デビュー作が配信されていた。『Un 32 août sur terre』は彼のデビュー作にしてカンヌ国際映画祭ある視点部門に選出された。ライバルには後にリメイク版『ジュマンジ』を作るジェイク・カスダンの長編デビュー作『ゼロ・エフェクト』やリティ・パン『戦争の後の美しい夕べ』、ホン・サンス『江原道の力』、アンゲラ・シャーネレク『Plätze In Städten』がいる(ある視点賞はカザフスタンのダルジャン・オミルバエフ監督作『Tueur à gages』)。そんな彼のデビュー作を観てみました。

車を運転する女性はウトウトしている。そして遂に横転してクラッシュしてしまう。命からがら脱出した彼女はヨロヨロよろめきながらヒッチハイクで助けを呼ぶ。おっさんに「今日は何日?」と訊くと、「8月32日だ」と答える。しかし、彼女は一切違和感を抱かず病院へ連れていってもらう。

病院では医者が「あなたには軽い記憶障害がある。」と言い始める。

「例を出そう。私の名前はVikram Amriwallah。1951年ボンベイ生まれです。、、、では私の名前は?」

と語るのだが、そもそもマイナーな名前すぎるのでこの時点で信頼できないのだ。この映画は事故にあった女性Simone(パスカル・ビュシエール)の信頼できない世界の中に観る者を誘うのです。何故か、友人フィリップを呼び出して自分探しの旅に行くこととなる。行き先はソルトレイクシティにある塩の平原。意地悪なタクシー運転手にぼられながらも、雄大な白の世界で彼女は自分の心を癒し、宇宙船のようなカプセルホテルで心の膿を抜こうとするのだ。本作は、心に傷を追った女性が心の世界を彷徨い再び現実に戻る過程を、「8月32日以降」という日付でもって表現している。またドゥニ・ヴィルヌーヴの画の拘りはデビュー作からも感じられるので、『メッセージ』や『ブレードランナー2049』の原点でもあります。一方でデビュー作故の青臭さがあり、本作では『勝手にしやがれ』オマージュに気づいて欲しいツッコミ待ち映画となっている。ジーン・セバーグのポスターに強烈なジャンプカット、フランス語と英語の意思疎通の難しさと『勝手にしやがれ』の手法がふんだんに使われ、そのテクニックに気づいてほしそうなドヤ顔をしているのだ。

そこが結構ダサいのですが、本作を観ると『メメント』時代のクリストファー・ノーランっぽさもあり中々面白かったです。

Filmarksには誰も評書いていないのですが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ論書くなら観るべき映画と言えます。
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