<青春の熱気と孤独、その揺れがまぶしい>
俳優になるために上京したものの鳴かず飛ばずで、同棲中のユキとの生活もうまくいかない27歳の悠二は、ある日高校時代の同級生と再会し、在学当時にヒーロー的存在だった佐々木や仲間との日々を思い起こす。そして舞台『ロング・グッドバイ』の稽古に参加した悠二は稽古が進むにつれ、舞台の内容が自分の過去や現在にリンクして、やがて自身と向き合い見つめ直していく。
青春を過ぎようとしている悠二の視点で、青春真っ只中の佐々木の姿を回顧するように描いている。だから、思い出の中の不器用な佐々木の生き方は、胸が締め付けられるように切なく響くが、それに比べ先が見えず悶々とするだけの悠二の思いはなかなか響いてこない。でも、22歳の時は「まだ何とかなる」と思えたことが、27歳になると「自分は何をしているのか」と自問するようになる。これはわかる。
青春映画って、観る側の年齢や、持っている思い出の良し悪しで感じ方は随分違うんだろうな、という気はする。もはやノスタルジーとしか捉えられず、色鮮やかな思い出を持たない者には距離感があって、「刺さる」というより「わかる、わかる」という感覚になってしまうのは仕方がない。
そして、カメラワークも演出も若々しい。セリフの無い“間”とか長回しのシーンに、若き日の心の揺らぎが繊細に描かれる。徹夜のカラオケで夜明けを迎えるが、孤独な男女二人は店を出ても別れ難く、見送りながら振り向く。堅実に暮らす旧友の赤ん坊を抱いた悠二は、赤ん坊に泣かれ自身も涙が止まらず、胸に去来するのは置いてけぼり感(?)だった。
こういう瑞々しい、やや感情過多の映画ってこの年代でしか、そして生涯で何度も撮れないだろうと思った。心地良く感性を刺激された。