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逃げた女のcinecoroのレビュー・感想・評価

逃げた女(2019年製作の映画)
3.5
人生の隙間に抜け落ちてしまいそうな何気ないひとときの楽しみ方ってやはり女性の方がうまいよなあと感じる。
切り返しの全くないちょっと奇妙な長回しで、観ているこっちは不安になってくるけど敢えてドラマ性を削ぎ落とす手法なのかな、それこそモニターを通して間接的に観ている様な…。
主人公ガミが会う女性達はそれぞれ自立しているがいずれも今直面している厄介事があって、どういう生活をしているのか、どんな人なのかが何となく分かってくるのだけど、一方ガミの輪郭はぼんやりとしている。ただ5年間一度も離れたことのない夫と、愛する人とは一緒にいるべき、という意見のもとそうしてきたのだ、とどこか他人事のように繰り返す。
女性達の時間の中に3回訪れる男性とのやり取りはちぐはぐで、この噛み合わなさもうっすらとしたノイズでしかないのだけど、明らかにそれぞれの女性達の安全圏の外側にある。
結婚して、夫に愛されて幸せなはず、という内からも外からも発せられる理想型が、どこか不安気なガミ、輪郭のはっきりしないガミを唯一カタチとして取り巻く物だったのが、ラストに向けて融解していくようで、ようやく個人を取り戻したような表情で画面を見つめるガミが最高に良かった。
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