逃げた女のneohetareのネタバレレビュー・内容・結末

ホン・サンス作品初めて観てみた。
こんなにズームで寄り引きしてる映画初めて。普通敬遠されるから。
舞台上のどこに注視するか自分で視線を動かせる劇場の鑑賞者のような視点。でもそうではなくて、むしろ「カメラで撮ってます」という事実が剥き出しになっているカメラ。

「夫と5年間で一度も離れたことがない。愛する人とはいつも一緒にいるべきだと夫が言うものだから」と3人の旧友に向けて同じ話を繰り返すガミ。

3人目に会ったウジンは夫が作家としてテレビやインタビューの場で同じ話を平然と繰り返していることに嫌気がさしており、そんな話に本心などあるわけが無いと糾弾する。

ガミはその話についてそれは酷いねと同意していたが、恐らくガミはウジンの夫と同様に真実ではない事柄を話している。

ガミは今幸せではなく、夫から逃げてきたのだろう。
3人の旧友と話していても口で言うほどの幸せな雰囲気が出ていないどころか、表情にどこか気持ちの曇りが感じ取れる。
最近に髪を短く切ったことなども恐らくその示唆の一つ。

旧友たちと話した結果としても恐らくガミの中に決定的な変化は起きていない。これから自分で落とし前をつけるのでしょう。そういうものですよね。でもあの小さな会話たちも無意味というわけではなく0.1ミリくらいガミの重心を動かしているはずで、その表れがあの映画の二度見なんじゃないかなと思っている。

一見取るに足らないような情報が続いているだけのように見えて、実はいっぱいヒントというかフックが転がっているのが興味深かった。防犯カメラ、窓、りんご等々。

質問の回答になっていないけどテキトーな相槌とノリでなんかサーッと進んでしまっている会話のリアルさ凄かったなあ。