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悲しみが乾くまでのとぽとぽのレビュー・感想・評価

悲しみが乾くまで(2008年製作の映画)
3.5
「悲しみは癒えた?」逃避したい現実、この傷はきっと癒えないだろうーーーーそれでも生きてる、それが何より大切。何かを失っても生きてさえすればまたやり直せるから(→だから誤解を呼ぶ邦題)。
見るにはまだ早かった、こんな状況が来ないのが一番なんだけど。そして見る前に思っていたより真摯に暗くヘビーな時もあった、だからこその微かな光みたいな希望。スサンネ・ビア監督らしい"目"の演出で神経がピンと張り詰める。作中で白黒映画への言及があったけど、本作も光と影のバランス、陰影のメリハリが際立っていて登場人物たちの境遇や心境に寄り添っているよう。特に主演二人の適役っぷりと熱演にはタジタジで圧倒される、時に狂気じみているよう(ベニチオ・デル・トロがヤク中とか完璧、疑問あるなら彼のヤバい目を見よ!)。ジャンキー仮免許パパが加わった即席疑似家族の物語はその取っ付き難い語り口から単なるスリーピングムービーになる所を踏み止まって多少メロドラマ過ぎても抗い難い感情量で胸を打つドラマに仕上げているーーーー"ACCEPT THE GOOD"
自分はどれほどあの人のことを知っていたのだろう?最愛の人や子供について自分の知らなかった真実、それは些細なことかもしれないけどやっぱり気になる。意図せず残されたものが自分を剥き出しに衝突しながらも支え合う激しい様は冷えた心にも熱を帯びている。だからこれらを奇行などと片付けてはいけない、一蹴して忘れ去ってはいけぬ誰にでも訪れうる極限。ぼくなんかの想像だにできないほどの傷を負った人の言動やどんな心境になるかなんて何が正解か分からない。心に大きな穴を抱えて虚無に襲われても亡くなった人を本当に無くさないために何ができるだろう。悲しんでも悲しんでも悲しみ足りずまた手を伸ばしてしまう、終わりなど来ないように。まるで立ち直るには多くを失いすぎたように、それでもまた幸せになれると信じたい。それと同時に前に進むことも何かしらの方法でできるはず。きっと深すぎてぼくの経験も心も追い付いていないのだと思う、ある意味で取り残されて寂しくなる。けど、こういう喪失感から立ち直ったりする系の物語って残される人たち金持ちの割合高くて生活に困っていなさそうだからリアルに欠けることも(緑の生い茂った綺麗に整った庭があって、と)。それだけ集中して心情にだけ注力できるということもあるかもしれないけど。この夢から覚めても決意が揺らがぬように自分を正す、そんなキッカケを探してる。火事で何かを失ってもまだ間に合う本当に大切なものに至る試み。

「パパみたいに死ぬの?いつ?」R2-D2なら友達になれる→デルトロのスター・ウォーズ出演に向けての10年越しの前フリか
「またハッピーな気持ちになれるかしら?」
「暗いと輝くのか」「自ら輝くの」
「善は受け入れろ」
「最高にハッピーな気分だ、そこで目が覚める。二度と触れない、二度と触れない、二度と触れない」
勝手に関連作『チョコレート』『21g』
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