豚肉丸

二重のまち/交代地のうたを編むの豚肉丸のレビュー・感想・評価

4.4
東日本大震災の非被災者である若者4人が被災者の話を聞き、話を語り直そうとするお話

若者たちが被災者達の元に訪れ、生活を共にし話を聞いて、その聞いた話をカメラの前で語り直す...という、手法としてはよくあるドキュメンタリー映画ながらも、よくあるドキュメンタリー映画では見逃されがちな当事者性や非当事者が当事者の話を聞いて語り直すことの暴力性に着目した作りになっていたのが面白い。特に当事者性が重視されがちな現代だが、話を継承して遺していくためには非当事者に話を伝え、非当事者自身が再び語り直すというプロセスがどうしても挟まる。本作は若者たちが話を語る際の不安、戸惑いをカットすることなくそのまま映しており、「整った」ドキュメンタリー映画とは明らかに異なった、違和感のような印象が与えられる。
ラストの若者たちの対話がこの映画を纏めているなと思った。父から息子の話を聞き出せなかった、という話のように「その人から話を引き出したい」という思いは暴力にも繋がるし、語り直す上で必ず抜け落ちるものは出てくる。全てを完璧に語りたいなら当事者本人に語ってもらうだけで良いが、話を遺す上では伝え直す必要が出てくる。その困難さに明確なアンサーは出せないまま終わってしまうが、話を語った後に朗読される『二重のまち』はこの困難さを軽減させるための一つの方法なのかなと思った。フィクションにすることで話を語り直す...
面白かった!
豚肉丸

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