manami

君は永遠にそいつらより若いのmanamiのレビュー・感想・評価

-
『ファンファーレ』が良かったので、吉野竜平監督の過去作を。
初っ端のウザ飲みからしてシンドイな。あの男どもこそ今後いっさい〇〇〇できなくなりゃいいのにと考えてしまう私は心が狭いのか。ホリガイみたいにポチョムキンどうたらこうたらなんて口が裂けても言ってやれないわ。
そのホリガイを演じるのは佐久間由衣で、赤髪が新鮮。話したいことも卒論も、中途半端でまとまりがない、とっちらかっちゃうホリガイ。彼女があまりにも締まりのない表情をしてるもんだから、大学生たちのダラダラした日常を描く作品かと観ていたら、綻びからどんどん闇がこぼれてきて、平穏な、もしくは平穏に見えていた、あるいは平穏に見せていた日々を、濁流のように飲み込んでしまう。
ホリガイの学友である吉崎も、辛い。彼女への態度が変わってしまう理由がとても辛い。誰も悪くないのになぁ。演じているのは小日向星一、小日向文世の息子さん。
吉崎を通じてホリガイと知り合うことになる穂峰役が笠松将で、この二人と言えば『らんまん』の綾と幸吉で、「転生しとる…!」と勝手に心密かに萌えてしまったわ。それはさておき穂峰もまた辛いよな、心ある人の辛さを凝縮したよう。
そして奈緒。低温系の奈緒が可愛い。ファッションも可愛い。電話の声も可愛い。可愛いだけじゃない、もちろんちゃんと凄い。彼女の役・イノギは心情も背景も難しいのに、さすがとしか言いようがないわ。いくらなんでも不自然だから何かしらあるのだろうとは予想できたけど、それでも彼女が抱えてきた「秘密」を打ち明けるシーンでは心をえぐられる。
ホリガイとイノギの会話がどれもこれも良い〜。「あいつ、今日いろいろあって泣きながら△△△出したんだよ」「何それ、どういう状況?」「ちゃんと見てあげなかった、見てあげれば良かった」こういうふうに自分の後悔を話せる関係って貴重だよね、素敵だな。
若さがすなわち幼さである年齢では、それは弱さにも等しい。力では大人に敵わないし、親の離婚で意に沿わぬ転校を余儀なくされることだってあるし、どんなに悲惨な環境に置かれていようが「親権」の持つ威力は強大だ。
それが大人になるにつれ、若さは社会生活における有利な条件へと変わっていく。若さは強みになる。
ホリガイたちがいるのは、そんな若さの転換期だ。ずっとずっと弱い立場で、弱くいる術を身につけてきたのに、今度は強くあるべき立場へと押し出される。自ずと自分の弱さと、それを生んだ原点を省みることとなる。
ホリガイさんとイノギさんの行動には心底驚いたし、ラストも思いがけない展開になったかと思ったらさらにもう一段階あって、これまた予想外な終わり方。彼女や彼やあの子、みんなどうなったのかなぁ、笑顔で過ごしてほしいなぁ。

タイトルの回収がとても意外でとてもとても響いた。以下、ネタバレ。















「いつかきっと私が見つけ出すから、諦めないで待ってて。君をさらって、君の心と存在をもてあそんで侵害するそいつらは、どんどん歳をとって弱っていくから。だから絶対に諦めないで。君は永遠にそいつらより若いんだよ。」

142(1182)
manami

manami