このレビューはネタバレを含みます
2020/11/01 東京国際映画祭
・開かない扉
ホリガイの前に開かない扉が何度も登場する。それは彼女が超えられないあるトラウマを思い出させる。それをイノギのLINEメッセージに後押しされたかのように、ロックのかかったベランダドアをスマホで破る行為。その行為は自分のトラウマと向き合い、それを乗り越えようとした彼女の必死のもがきだったのではないだろうか。
・イノギの赤い自転車とホリガイの赤い髪
赤い髪色をしたホリガイが少女いじりされるのを見て、どこかのタイミングで少女を失い髪色が変わるだろうと思うのが妥当。それに悲惨な事件により少女を失ったイノギもまた倒れた赤い自転車というイメージで、二人を色で強くつなげる。
・映像でも伝わる演出力
江ノ島で一人でぼーっと海を眺めていたイノギ。そこへホリガイの電話。お互いの話を重ねていくうち段々心の中の話もするようになるふたり。会話だけでも二人の距離が縮んでいくのが分かるが、映像もまたそうだ。
電話をする時、カメラは右(イノギ)と左(ホリガイ)を向いている二人の顔をアップで撮っている。まるで二人が同じ場所で向かい合っているかのように。会話の進行と同時にイノギは右へ、ホリガイは左へ歩き出す。ものすごい距離をお互い歩み寄って縮めるかのように。
その後ホリガイの志望動機(トラウマ)を聞くシーンの後、1台の自転車に二人乗りして同じ道を進むショット。別々の道から距離を縮め、同じ道を行く。正に二人の関係を映像でも表現している。
こんな演出は他にもあって、私みたいな映画の観方をする人には満足の行く映画になっている。
完璧な映画とは言えないが、何度も観たいと思う作品に違いない。少なくとも俺には。
P.S. 2階で手上げているのに全然気づいてくれないMCさんよ💦😭