Tommy

国葬のTommyのネタバレレビュー・内容・結末

国葬(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ソ連についてはほぼ無知な自分だが、面白かった。

ナレーションもなく、淡々と映像を見せるので、ちょこちょこ眠くなったりもしたけれど。

まず気になったのは最初の死去を伝える放送。死の状況をかなり詳細に語っていた。平成生まれなので知らないが、危篤になってから毎日のようにその症状が報告されていた(?)らしい昭和天皇に通ずるものを感じた。

群衆はスターリンを弔おうと長蛇の列を作る。皆、神妙な面持ち。
会場に入り、スターリンの遺体を見た途端、堰を切ったように泣き出す群衆。
大声を出して泣くというよりも、涙が溢れ出すような泣き方。「スターリンは死んだ」という事実をその目に目撃し、処理しきれていないような涙だった。
印象に残っているのは赤ん坊を抱いた男性。泣いている様子でよく見られたのは、女の人が泣き、ハンカチで涙を拭う様子。
しかし、この男性は、たまらず泣き出し、肩に乗せていた赤ん坊に顔を埋めた。
真の「悲しみ」を感じた。

各地で行われる追悼のスピーチ。
皆、口を揃えていう。「スターリンの心臓は鼓動を止めた」しかし、「スターリンは我々の中に生き続ける」
ある意味、ソビエト国民にとっては、「スターリンの意思を継ぎ、共産主義社会の建設をする」ことがスターリンを不滅たらしめるということだったように感じる。

ただ、群衆が覗かせる表情は、三者三様だった。悲しみに暮れ泣き出すもの、険しい表情で固まっているもの、希望を失ったように呆然とした顔をするもの。

スターリンの意思を継ぎ、共産主義社会建設へ力強く歩み出すという雰囲気ではなかった。スターリンというカリスマを失って戸惑う民衆が映し出されていたように思う。
3年後にはスターリン批判で、スターリンへの個人崇拝が批判され、スターリンの治世が痛烈に非難されるとは思えない雰囲気だった。

スターリンという人物がいかにして民衆をここまで個人崇拝へと向かわせたのか、非常に興味が出た。ソ連について学んでみたいと思う。
Tommy

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