crn

粛清裁判のcrnのレビュー・感想・評価

粛清裁判(2018年製作の映画)
4.0
労働者賛美、知識層との分裂への煽り、フランスがソ連政権打倒を計っているとの示唆、外国との内通はバレるという脅し、経済政策の失敗の責任の押し付け、などを通して、社会主義という虚構に大衆をさらに組み込んでいくためにスターリンがつくった粛清裁判という一つの仕掛け。傍聴人や街の人は何の実害も受けていないのに、被告人たちの殲滅を望むほど、この舞台でうまく踊らされていて恐ろしかった。

舞台装置となった被告人と検察側の人々のその後をエンドロールで知ると、スターリン次第で命がどうとでも扱われたことがよく分かった。

大衆の自己欺瞞を見て、「嘘は敵に向けられた意図的なもの(嘘をついている側は嘘とまことの違いを自覚している)から、自分たちに向けられた事実の代用品(自分でもどこからが嘘か分からない)へと変質してしまう」という話を思い出した(重田園江『真理の語り手 アーレントとウクライナ戦争』)。
crn

crn