ブラックユーモアホフマン

日子のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

日子(2020年製作の映画)
4.4
結構、すごいものを見た、感覚がある。

フィルメックスにて、初ツァイ・ミンリャン。

前半。基本、フィックスで超長回し。
ワン・ビンやペドロ・コスタなんかを思い出した。
特にドラマ的な何かが起きるわけでもないので自然と画面の隅から隅まで観客が自主的に観察するようになる。そうすると、遠くの方で起こっていることとかが勝手に気になってくる。そうやって、観客それぞれに世界を広げ作ることを促す。

中盤。パンイチの若い男が全裸のおじさんをマッサージする様子を大勢の観客と共に延々見つめ続ける数十分間。格別だったなぁ。
これ何の時間?と、笑いをこらえながら過ごした奇妙な時間。まさかこんな時間が人生に訪れるとは想像もしなかったなぁと思いつつ、映画ってそういうものかもしれない、これこそ映画体験というものかもしれないと思ったりした。
見たことのないものを見せられ、体験したことのない時間を体験した。

そしてそのシュールに思えた時間が最後、ちゃんと感動的に響いてくるので驚いた。計算された長さだったのだなぁ。

【一番好きなシーン】
・窓の向こうのビルの屋上にヘリが降りるところ。
・おじさんがタバコを吸いながら布団をひっぺがすところ。