猫神社

悪の寓話の猫神社のレビュー・感想・評価

悪の寓話(2020年製作の映画)
4.0
家族物には珍しく母親たちの存在感がなく、父親と子どもの関係がメインだと思います。

この野郎共がどうしようもないクズばっか。というか女も含めて大人全員ダメです。そこそこ裕福な中流家庭、底辺の父子家庭、若すぎる妊婦とか出てきますが、すべて機能不全家庭。大人は自分のことで精一杯で人生に疲れ切って今にも殺し合い始めそうなくらいピリピリしてて、その皺寄せを丸かぶりしてる子どもたち。傍目にはそこまで生活は苦しくなさそうなのになにがそんなにストレスなのか不思議だよ。てか子供の存在がストレスなんだな。

日本の機能不全家庭は無関心な父親と過干渉な母親というパターンが多いと思うんですけど。この作品の父親たちは内容はどうあれ子育てには関わっています。育児は母親に丸投げして飲みに行ったり、休日にひとりで出かけたり、子供がうるさいからと部屋に閉じこもったり、要するに日本の父親がやりそうなことはしてません。
食事中とか頑張って子供に話しかけてるんよ。でも空回りしてる。相手の気持ちを汲んで思いやりを示したりすることができない。これまでの人生でそんなスキルみがく機会なかったから。

隣家の男性と話すときもパパ友って感じじゃない。いかに自分が獰猛で強いオスかをアピールし合う序列争いになってる。このとき子どもの誕生日パーティーじゃなかったっけ? なんで近所の奥さんや子どもたちが集まってる片隅で女を品定めして襲う算段してるんだよ。ワルぶった会話する必要ないだろ今。

会話が空回りしてるのも、子ども向けの話題なんて自分の中にはないからだよね。だって男性は小さい子に興味ないから親戚や近所にいても近寄らないし、女子供が好むことに関わると男社会で馬鹿にされて大変だ。だから遠ざけて生きてきたのに結婚して子供ができたら急にやれって言われても困るよね。

そんな父親たちが家庭で全然うまくいかなくて、しかもストレスは弱いやつに八つ当たりすることで発散するという男性的な本能によって目の前の弱者つまり子どもを攻撃する。結果まともに返事しなくなり、ますます思い通りにいかなくなるという悪循環。

しかし共働きの核家族では、明らかに向いてないタイプの親も育児に参加せざるを得ない。
ここでポイントになるのは、これが大家族主義の代表格イタリアの作品であるということ。昔ながらの三世代同居で大勢の大人が少しずつ負担する育児のほうがいいんじゃないの〜?という主張にも見えます。

映画だってテーマが家族関係だと全面に押し出してしまうと男性は見ないかも。サスペンスやホラーっぽくすれば少しは見て考えて学んでくれるかも。という作品なのかも。
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