rage30

セイント・フランシスのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ナニーの仕事を始める女性の話。

主人公は所謂、大人になれない大人という感じで、仕事や結婚といった人生の目標も持てずにフラフラしている。
そんな彼女なので、ナニーの仕事も最初はいい加減な態度でイライラさせられる部分もあるのですが、子守りをする子供やその両親と接していく内に、段々と責任感が芽生え、成長していくと。
最終的には子供を叱ったり、母子の為に怒れる人間にまで成長するので、素直に感動するものがありましたね。

あと、本作がユニークなのは、生理や中絶といった女性特有の描写が頻出する事。
こんなにも経血が出てくる映画は珍しいし、経口中絶薬を使った中絶も初めて見た気がします。
女性なら共感するところでしょうし、男性には新鮮に映るんじゃないかな。
特に生理ネタはギャグとして何回も出るので、若干クドいくらいなんですけど、「生理=大人になる事」と考えれば、主人公が生理に振り回されるのは、彼女が大人になりきれない事を暗喩していたのかもしれません。

主人公は大人になれない…でも、だからこそ、子守りをする/されるを越えた、友達の様な関係を子供と築けたのでしょう。
主人公が同級生に見下された時、子供と一緒になって復讐するのは最高だったし、子供の親が苦しみを吐露したり、中絶を心配された主人公が思わず泣いてしまうシーンも良かった。
セルフケアと言われても、なかなか簡単には出来ないわけで、時には他者からのケアが必要になるかもしれない…だからこそ、自分も他者をケアすると。
そうした連帯が自然と出来る女性が羨ましく感じられたし、これこそがシスターフッドの本質なのかなと思いました。

この一夏の経験を通して、主人公が大人になれたかどうかは分からないけど、子供に勇気を讃えられて、少なくとも自己嫌悪から抜け出す事は出来たはず。
内容的に『わたしは最悪。』を想起したりもしましたが、個人的には本作の方が好みかな。
宙ぶらりんな日常を送る、全ての男女に見て欲しい作品です。
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