rage30

キリング・オブ・ケネス・チェンバレンのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

実際にあった、ケネス・チェンバレン射殺事件を描いた作品。

医療用通報装置を誤作動させてしまった老人と、その安否確認に駆けつけた警官達。
たったそれだけの話にも関わらず、何故か最後は悲劇的な結末を迎えてしまうのです。

普通に考えれば、老人が警官に部屋を見せれば済む話だと思うんですよ。
でも、それすらも簡単に出来ない程に、黒人にとっての白人警官は恐怖の対象でしかないし、警官への信頼がまるでないのでしょうね。

一方の警官達。
老人がメンタルに問題を抱えていたり、犯罪の多い地域という事で、老人に疑いの目を向けるのは分かります。(これも偏見ではあるのですが…)
しかし、次第に差別的な感情が露になったり、ドアを開ける事に異常な執念を燃やす事になっていくと。

興味深いのは、彼らが一様に差別主義者というわけでもなく、仕事熱心な警官の様にも見える事。
あの老人とのやり取りで簡単に引き下がってしまったら、それはそれで無責任な様にも思えるし、疑いをそのままにしない姿勢は警官として正しい様にも思える。

問題は、彼らのモチベーションが警官としての正義感から来ているのか?それとも、黒人への差別意識から来ているのか?という事なのでしょう。
この線引きが出来ていない…むしろ渾然一体となっているからこそ、正義と差別という2大燃料が混ざり合った時に、爆発し、暴走してしまうのかもしれません。

警官が差別主義者か事前に分かれば良いのですが、流石にそこまで把握するのは難しいし、そもそも全ての警官が差別主義者というわけでないですからね。
だからこそ、黒人と白人警官の問題は難しく、今も続いているのだなと思わされます。
個人的には、もっと黒人の警官を増やして、黒人と白人のペアで行動させれば良いと思うのですが、黒人の警官が増えていかないのも何か構造的な差別があるのでしょうか…。

事前情報を入れずに見た為、最後にこれが実在の事件だった事を知って、衝撃を受けました。
てっきり、BLMを受けて作られた話かと思いきや、BLM以前の話だったとは…。
日本に住む日本人には、どうしても黒人差別やBLMへの理解が乏しい部分があると思いますが、本作は理解の一助になってくれる事でしょう。
「アメリカの警官は何で黒人を殺すのか?」「どうして黒人は警察に怒っているのか?」という疑問を抱えている人にこそ、見て欲しい作品です。
rage30

rage30