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チェコの古代伝説のBONのレビュー・感想・評価

チェコの古代伝説(1952年製作の映画)
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東のウォルト・ディズニーと呼ばれたチェコスロバキアの伝説的アニメーター、イジー・トルンカ。

同年のヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞受賞作。チェコでアニメーション制作が確立されていなかった時代に、あらゆる試行錯誤を行い、世界的にアニメーション界を牽引していったトルンカ。

本作はチェコスロバキア建国の歴史を6つの伝続的なエピソードで描いたセピア色の一大叙事詩。人形アニメ大スペクタル。

チェコ国名の由来となった指導者チェフによる建国の過程、チェコ神話をまとめた伝説的なエピソードなど、全6話で構成される物語。一大民族移動、新天地の発見と開拓、草創期のシャーマンや勇士たち、女と男の戦い、 ゴールド・ラッシュ、侵入民族との大戦争、救国の英雄。

ワンカット最大70体。何体人形を制作したのかという位の多さ、カメラがクローズアップで映す時の人形たちの勇敢な表情、馬や鳥などの動物たちが放つ神聖さ、全てが素晴らしい。

細部まで繊細に作られた衣装、それを身に纏うトルンカの人形たちの何とも言えない独特な表情と、オペラ劇のような音楽、煙や火などの特殊効果、壮大なセット、全体的にダークなムード。トルンカの作品は神格性を持っている。

彼の作品は短編でも心の底から感動するのだが、長編となるとトルンカが魅せるアニメーションの魔法が洪水のように押し寄せてきて溺れてしまった。ゲッソリ。
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