べし酒

わたしのお母さんのべし酒のネタバレレビュー・内容・結末

わたしのお母さん(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

主人公の夕子は最後泣くシーンまでは感情や考えを徹頭徹尾、面に出さないんだよね。生来なのか、長女という立場からその様に育ったのかは映画内では分からない。

この常に黙って裡に飲み込んでしまう感じはよく分かるが、感情を表に出しながら行動する母からすると「何考えているのか分からない」となるのも理解出来る。

酔って玄関で寝る母が心配で呼吸を確かめる夕子(と理解した)が、母が起きそうになると目を逸らすのは、駅構内で先に母を見つけながら母が振り向く瞬間に目を逸らす現在の夕子と呼応していて、先に相手に見つけて欲しいのか、自分から気持ちを素直に表すことが苦手なのかな。

恐らく、言わずとも理解して欲しいのが日本人的な家族という塊の複雑な感情なのかなと。終盤の回想で、前日酔って帰ってきた母親が心配で急いで帰ってきて思わず抱きつく夕子と、それを軽く邪険に振り払う母というのが、2人の関係性の象徴的暗示なのかなと。

親と子は全く別の人格性格を持った人間でありその様に対応すべきなのだけど、家族だから言わなくても分かって欲しいという気持ちとのアンビバレンツに苛まれることを描いている映画に感じた。

映画内で弾けるような笑顔は見せないし、醒めたような顔でタバコを吸う井上真央さんがメチャカッコよく見えたよ。
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