このレビューはネタバレを含みます
今作との比較のため原作漫画は4巻まで、アニメは12話まで鑑賞。
ココ一年程注目し続けていた英勉監督の最新作、人気漫画の実写化で豪華キャストという事もあり、それなりにヒットもしているみたいだけど、
正直、この映画、原作より面白くないですか?
というのも原作を見ていると過去に戻る際に色々と準備をしたり、ある程度今回のミッションはこれですといったゲーム的な感じになっていて、今作では二時間の物語としてより映画的なお話にアレンジになっていて、
これはもちろん脚本の高橋泉さんの力というのもあるんだろうけど、ここ数年「賭ケグルイ」シリーズや「ぐらんぶる」、そして完全なる負け戦が確定していた中でもそれなりに仕上げた「映像研には手を出すな!」などの漫画原作の実写化を手掛けている英勉監督の圧倒的キャラクター輝かせ力(?)も大きく作用している…はず!!
今作だと主人公のキャラクターの調整が絶妙で、原作ではあくまでバケモノじみた登場人物には勝てないが、そこまで弱いわけじゃない、いちヤンキーという具合だった主人公タケミチが、
今作だと中学生のナオトがカツアゲに絡まれているときの撃退法やヒナとの出逢いのシーンの追加で徹底的にヘタレキャラになっていて、そのヘタレが頑張るからこそキヨマサとの2戦でのタケミチの魅力が倍増している。
またこのヒナとの出逢いの追加シーンは原作では少なくとも4巻までは描かれておらず、原作やアニメだけ見ているとヒナが何故タケミチと付き合っているのか?という疑問への解答がなんとなくしかわからなかったが(あまりにも無条件でなんならちょっと気持ち悪かった…映画を観た後に原作を当たったからというのもあるだろうけど)、
そこにヘタレでも頑張るのがタケミチだからという理由の部分が入ることでヒナの行動にも説得力が生まれるという今作でもなかなかの良アレンジになっている。
北村匠海演じるタケミチ、今田美桜演じるヒナ以外でもキャラクター一人一人が本当に魅力的で、
マイキーを演じる美しすぎる顔と坂本浩一仕込みのホワチャーでアクションも存分にこなす吉沢亮、
同じ不良でも「HiGH&LOW」シリーズの村山さんの軽快さを封印したドラケン役の山田裕貴(長内をぶん殴って気絶させたことに気付くときの「ほんとだー」のとこだけ完全に村山さんでみてて思わず笑顔になってしまった。。)、
キヨマサ役の鈴木伸之はこちらも「HiGH&LOW」シリーズのヤマト役を完全封印して最高に嫌な奴で、一人ビーバップ的なヤンキーを見た目的に体現している(めちゃくちゃ似合ってる)あたりもたまらない。
特に言うことは無いけどとにかくイケメンのミツヤ役眞栄田郷敦、無駄に完コピの半間役清水尋也、知的さと粘着質な狂気を短い登場シーンで表現したマミショー、10年後のすさみ具合が完璧なアッくん役のアラン様磯村勇斗、
ナオト役の杉野遥亮は姉を失って数日後という不安定さを内包したキャラクターだという事が今作でうっすらと強調されていた気もする。
細かいところだと冒頭のビッグバジェットの日本映画にしてはちょっと「オッ」と声が出るようなシークエンス、ここで今作の争点となるマイキーの首の竜のタトゥーが写ったタイミングでのタイトル、2回目に観るとここでも声が出る。(あ、2回目行きました。)
原作のレンタル屋さんからさらに何かが下がるネカフェでのバイトと店長のむちゃくちゃむかつく「ハイ、謝るだけー」(あいつ髭青いんだよ、おれ髭青い奴嫌いなんだよ!)
原作の紆余曲折を見ているとそれぞれを上手くまとめてそれはそれは鮮やかな流れにした喧嘩賭博のシークエンス、ここのキヨマサのイきり散らした喧嘩スタイルがもう本当に憎たらしくてたまらない。
役者の年齢というところもあって高校生に設定を変更したんだろうけど、回想での高校を辞めたというところも逃げた感が強くなっていて良い。
もろもろ漫画原作の実写化としてかなりハイレベルな普通に面白い作品に仕上がってる。
と褒めちぎってはいるものの、今作が映画史的に重要な作品だとか、大傑作だとかそういうことが言いたいわけではなく、なんというか英勉監督がこの規模のシネコンでガンガンかかるような映画の最低ラインに立ってくれていたら映画ファンとしてこれほど幸せなことは無いというか、うん、まあそんな感じです。
一個だけ流石にそれは無いというか、ものすごく残念だったのは10年前の設定が2010年になっていたこと。
2010年であのタイプのヤンキーは流石に絶滅してると思う。
別に現代パートが2020年じゃなきゃいけない理由って無さそうだから現代パートを2015年にして原作通りの2005年ならギリギリ不良がかっこ悪いって言われる時代っていう台詞にも説得力があったのに。。