りょう

グリード ファストファッション帝国の真実のりょうのレビュー・感想・評価

2.4
 マイケル・ウィンターボトム監督の作品は、90年代後半頃に当時の「ひかりのまち」や「日陰のふたり」などの傑作を観ていましたが、最近はほとんど名前を目にすることもなくなっていました。あの頃のような作風に回帰するようなことはないのでしょうか。

 この作品は、ファストファッション業界をめぐるフェアトレードや労働搾取の問題を批判しているようでしたが、もしそうであるならば、まさにエンドロールで指摘したようなことを直接的に映像化して欲しかったです。
 序盤のフラッシュバックが交錯する場面は、ちゃんと時間軸が説明されているので難解でもなく、主人公であるリチャード・マクリディの経営者としての資質が形成される過程などを理解するために効果的で、彼の振舞いや人格(グリード=強欲)を否定的に描く箇所に共感できました。
 しかしながら、物語の主要な舞台をマクリディの還暦パーティに設定し、ほとんど無関係なTV撮影のエピソードなども頻繁に描写しているので、富豪の優雅でわがままな生活ぶりを延々と観ていたという印象しかありません。
 その結果として、この作品のテーマがとても曖昧なものになってしまいました。税務当局による公聴会の模様やギリシャに入国したシリア難民の顛末をもっとフィーチャーした構成であれば、いわゆる社会派ドラマとして認識できたような気がします。フィクションとして製作される映画のテーマとして共感できるものだっただけに、とても残念な気持ちで終わってしまいました。
 また、誰もがマクリディを断罪したいはずですが、スリランカ出身のアマンダの犯罪行為が不問とされる結末は、およそ納得できるものではありません。
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