都部

タイラー・レイク -命の奪還-の都部のレビュー・感想・評価

3.7
アクションの名手:ルッソ兄弟製作による本作は、やはり複数種の魅せるアクションシーンの多くで形成されており、クリス・ヘムズワースの演者としての特性に基づく力強い活劇を重厚感たっぷりに、これでもかと展開していく姿は見応えのある映像としての魅力が確保されていると言える。

物語中盤に位置する約10分に及ぶ擬似ワンカットとして撮影されたタイラーの攻防が映画としてのハイライトで、思わず流麗さを覚えるカメラの動きとアクションが澱みなく共鳴して流し込まれる映像的快楽は堪らない。連戦に次ぐ連戦の矢継ぎ早さにより孤立状態に追い込まれたタイラーの孤軍奮闘ぶりが際立つし、カメラワークと編集の妙を用いた臨場感を帯びたアクションの撮り方が実に達者で大変感心させられる。

それに対して物語は救出劇の王道を出ることなく既視感溢れる展開に終始しているのは良くも悪くもで。あえて作品に偏りを持たせることでアクションを効果的に見せることには成功しているが、度々挿入され断片的に語られる傭兵達の悲哀は仄めかし程度の印象しか覚えずに、彼等の身体に慣れ親しんだ暴力性には克明な形が設定されていないように思えるのはやや残念だった。

とはいえ土煙舞うバングラデシュを舞台とした闘争劇の臨場感は十全に発揮されており、幾度も響く銃声による死の渇きっぷりが良い。最高。権威に使い潰される傭兵達の軽すぎる命の消費……、無機質な魂の遣り取りが連続するからこそ生かそうとする/生きようとするタイラーとオディを主役たらしめている。
都部

都部