安堵霊タラコフスキー

最後にして最初の人類の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

最後にして最初の人類(2020年製作の映画)
5.0
作曲家として多数の映画に貢献してきたヨハン・ヨハンソンによる、映像と音楽の融合物としてのコンセプチュアルアート。

旧ユーゴスラビアに存在する、ウルトラマンの怪獣やエヴァの使徒等を髣髴とさせる謎めいた建築物を神秘的かつ不気味に用い、抽象的なSF叙事詩を映像作品として仕上げることに成功した点においてだけでもまず見事としか言い様がない。

そして作曲家の作品だけあり音楽面でも不思議な魅力が備わっており、さながらタンジェリンドリームとブライアン・イーノとコイルを悪魔融合させたかのような辺獄的環境音楽然とした音の渦には驚きと感動を味わわされた。

物語を綴る機能はほぼはぼ排除されてはいるものの、それ故に芸術としての映画の形を再認識するような作品に出来上がっており、デレク・ジャーマンやアピチャッポン・ウィーラセタクンらの作品がそうであるように表現それ自体を堪能できる作品の性質には尊さすら覚える。

いつも以上に点数を付けるのは野暮だと考えた作品ながらも、こういうコンセプチュアルな芸術が好みな身としては素晴らしいと言わざるを得ないので、便宜上満点としたい。