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マイ・ニューヨーク・ダイアリーのsomaddesignのレビュー・感想・評価

5.0
70歳を超えて尚素敵カッコイイ、シガニー・ウィーバーが見どころ
青春映画なのに老齢の大人たちのカッコよさが際立つ

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ジョアンナはニューヨークで安アパートに住み、カフェで執筆しながら作家を目指す生活を夢見て女友達の家に居候中。出版エージェントでアシスタントの職を得るが、気難しい女性上司の下で振り回される毎日だった。仕事は上司が担当するJ・D・サリンジャー宛に世界中から届く熱烈なファンレターの処理。心揺さぶられるファンレターに連日触れるうちに、無味乾燥な定型文で返信するのが心苦しくなり……

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例年以上に本業が忙しすぎて💧

原題は「My Salinger Year」。
2014年に上梓されたジョアンナ・ラコフの自叙伝「サリンジャーと過ごした日々」の映画化。サリンジャーの作品が好きな人だったらもっと楽しめそう。不勉強なので「ライ麦畑〜」くらいしか読んでない上に、いまいち理解できてない。

「プラダを着た悪魔」みたいな、昨今流行りのガールズ・エンパワーメント映画かと思ったら左にあらず。さまざまな人の心の底を垣間見るうちに、自分自身ですら気づいてなかった自分の心の底を見透かすような「青春お仕事映画」だった。

俯瞰すればサリンジャーの著作になぞらえた、欺瞞に満ちた大人の世界に、これから大人になろうとする若者が挑む話に見えた。今まさに大人の扉を開こうとしてる若者が、見栄えだけ整えた嘘だらけの大人世界に嫌気が差して、細やかでも正直さを通そうとして現実に打ちのめされる……って「ライ麦〜」っぽい構図。
単に現実の厳しさを知るって訳じゃなくて、自身の未熟さを知る話だし、(古い慣習から抜け出せない)老害めいた大人だと思ってた人達のB面を知ることで、世界の奥深さを知る話でもある。世界のウラオモテだけじゃなく、立体的な絡まりで出来てることを知ってく話になってて、誰かを悪者とすることない青春映画としてとても誠実。


作家の夢をあきらめる友人とのやりとりが良くて、夢追い真っ最中のジョアンナからすれば裏切りや敗走に思えちゃう。友人からすれば、人生の違うステップに進むための取捨選択であるはずで(きっと難しい決断でもあったはず)、祝福すべきなのに、ついつい裏切られ勝手に置いて行かれた気になっちゃう。

同棲相手の恋人ドン。喧嘩の言い草がイチイチ良い。アメリカでも「俺のが年上だかんね!(君より世間を知ってる)」て言うんだな。


ジョアンナを演じたマーガレット・クアリーがとにかくキュート。目と眉がハッキリとしてやる気に満ちた若者である一方、自分自身が何者であるか・何者たり得るか…恋愛や仕事を通じて悩み苦しむ姿が等身大の若者っぽくていい。


衣装がとにかくかっこいい。95年が舞台にしては少し古風なカラーだけど、着こなしが普遍的なカッコよさある。ジョアンナの出勤ファッションも素晴らしいし、何よりマーガレットの衣装のカッコいいのなんの。
(スポーツブランドやヒップホップファッションをしてる若者が一人も出てこない。90年代のNYなのに!)
あと90年代はアメリカでもまだガンガン煙草吸えてるの隔世の感。職場でタバコは当然だし、レストランやカフェ・公共室内でもバンバン吸ってるの新鮮。


34本目
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