KentF

GUNDA/グンダのKentFのレビュー・感想・評価

GUNDA/グンダ(2020年製作の映画)
5.0
この作品が与えてくれるのは、濃厚な考える時間。世界の一側面を切り取った静かな時間。『工場の出口』の鼓動を受継ぐ、これこそ映画の原点。所謂ドキュメンタリーと呼ぶのも違う。

漆黒の囲われた世界を経て、外に解放される爽快感。色を排し、言語を退け、まさに魂が浮かび上がる。静かだが、さえずりや鳴き声、世界はかくも声に溢れている。自然のオーケストラの中で奇跡の美しい構図がつくられていく。

しかしそこには人間もいる。カメラの後ろにいる者と、主役たちの穏やかな関係をも感じ取れる。

理不尽に対する彼女の咆哮が、この世界に響くとき、私たちは残されたものの重みを知る。

以前アフリカに住んでいた時、住居の裏に豚の家族が放し飼いにされていた。そう、子ブタはかくも無邪気で、母ブタはかくも慈しむ。
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