この映画を作った全ての人に、そしてこの映画を商業ベースにのせた全ての人に敬意と感謝を述べたい、そんな作品です。
以下、この作品のスゴさを書きますが、本当のスゴさは体感した方にしか伝わらないと思います。ぜひ、劇場へ。
まず音です。ナレーションを含め、人間の声は一切入っていません。豚の呻き声、鶏の鳴き声、牛の走る音、鳥のさえずりなどが映画館に溢れます。最初は違和感しかないのですが、最後にはトラクターやバイクなどの人工音の方が不自然になります。私たちが普段感じている音が、いかに偏っているかを意識させられました。
モノクロにしたことも評価できます。色を廃し、ナレーションを廃し、アニメーションなども廃したことで、家畜たちに焦点が当たりやすくなり、目の前の展開を噛み締められました。本作は雄大なサバンナや深海ではなく、そこら辺の納屋と家畜の物語です。そんなところにこんな広い世界が広がっていたのか、未知の世界が広がっていたのかと驚きました。
しかし本作は単なる記録映画ではありません。そこには作者の意図がちゃんと含まれています。例えば群れと個、生きることの困難性、単に可愛いだけではない小豚や鶏、動物界における障害など、様々なテーマを内包しています。だから飽きずに見られますし、終わったあともいい「映画」を観たなと思えます。
本作の素晴らしさは簡単には片付きません。ぜひ観て、映画の中にある「宇宙」を感じてください。