ろく

ありあまるごちそうのろくのレビュー・感想・評価

ありあまるごちそう(2005年製作の映画)
3.7
原題はwe feed the world。このweって誰のことなんだろうとずっと考えていた。

内容はフードロス。知識で知っていることといざ見ていること。この差は大きい(まあその一方で思い込みも強くなるんだけど)。僕らはフードロスが実際に行われ、そしてその一方で飢えて死んでいく人も多いことを「知っている」。

でも知っているだけでそこにリアルはない。そしてこの映画はそれを少しだけリアルにするのかもしれない。圧巻は後半のエピソード。ブラジルで飢えて食のない家庭、つぎつぎに食のために殺される鶏、そしてネスレの社長の「物言い」(これがもう悪役過ぎてなんでこの映画にでたネスレって突っ込みたくなる)。

ブラジルでは「食」がないためさらには安全な水がないためがりがりに痩せた家族が映される。飼っている犬もヤギもがりがりでもう肋骨まで見えている。家族は水を近くの沼から運ぶがどう見ても泥水。そんな水を煮沸もせずに「いつも飲んでいる」一家。

さらには養鶏場。すべてがベルトコンベアで「飼育→堵殺」される鶏たち。コンベアで体と足が切り離され、足だけがコンベアに残っているシーンはどのホラー映画よりもショッキングだ。もうケンタに行けないよ、あれ見たら。

経済と生きるって問題は基本相容れないかもしれない。経済は「効率」であり生きるは「非効率」なんだから。だからそもそも齟齬が生じるんだけどそれでもその齟齬を埋めなければいけないのではと思ってしまう。…って思ってたらラスト、ネスレの社長。それは経済側として無理なのかも。そう考えてさらにさびしくなった。

この映画、決して面白くないし、映像のチョイスも恣意的なのではないかと思うこともあるんだけど、僕は観てよかったと思う。少しだけでも考えることができたので。
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