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ブラックミルクのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ブラックミルク(2020年製作の映画)
1.1
【ゲル生活のかけら】
第16回大阪アジアン映画祭でモンゴル映画『ブラックミルク』を観ました。本作は第70回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で上映された作品。ベルリン国際映画祭は毎年コンペティション部門が批評家からボロクソに叩かれており、ラインナップも地味なので日本公開されないことも多く、また観たとしてもホームランは少なかったりする。実はベルリン国際映画祭のうまいところはサブ部門にあり、第70回ベルリン国際映画祭ではギリシャのミクロとマクロの閉塞感で挟み撃ちにする『Digger』、肉体の静と動を極端に描いたコンテンポラリーダンス映画『Si c'était de l'amour』、マッテオ・ガローネの気持ち悪さ全開な『Pinocchio』等個性的な作品がサブ部門に出品された。というわけでドイツとモンゴルの合作というユニークなマリアージュにも期待して『ブラックミルク』を観たわけだが、これがイマイチだった。

ドイツで長年生活したウェッシ(ウィゼマ・ボルヒュ)がモンゴルの妹オッシ(グンスマー・ツォグゾル)のいるゲルに帰郷する。妹は伝統的なルールに従って慎ましく生きるが、そのことでドイツ生活に慣れているウェッシと軋轢が生まれてしまう。監督の自伝的内容なのだが、撮影が難航しているためか断片的ヴィジュアルが並べられているだけだ。本作は恐らく、外国かぶれしてしまいモンゴルの伝統に溶け込めない自分を見つめ直す映画であり、『ブルックリン』のような心理的変化が紡がれることを期待していたのですが、ひたすらゲルの慎ましい伝統を映すだけで、映画祭に来る人のオリエンタリズムを満たすことだけに全振りしているのが致命的だと思う。

世界の秘境、特殊な文化の映画は時に欧米人のオリエンタリズムを満たすことに力点を置いてしまい、肝心な物語が微妙なケースに陥りがちなのだが、本作は完全に撮影の不足をそれでごり押ししている感じがして、観ていて気分が悪くなった。

ウィゼマ・ボルヒュ監督の自伝的映画と聞いて、尚更モンゴルの文化に土足で入っている感じがしてタチが悪い作品でした。一応、大阪アジアン映画祭映画祭で観た映画は全部感想書くことを決めたので、記事化しましたが、本当に書くことが何もない。本祭ワーストです。
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