キングがエディプスコンプレックスを抱く母親はガイ・マディン作品に多く出演する俳優 Louis Negin が演じており、他にも多くの俳優女優がその性別を交換し、付け髭なり巻き髪なりを付けて演じている。特に印象的なのは、ケベックの人道的指導者タルトを女性が演じていることだろうか。これらはランキンの"学校の演劇の何でもあり感を出したかったし、WASPの話なので忖度して有色人種を出す意味は分からん"という意図を越えて、指導者という立場や男性社会としての軍隊の中で"男"として振る舞う必要があることを暗示しているようで興味深い。
登場する歴史上の人物はキング以外に、上記のアーサー・ミーエンとバート・ハーパーがいる。前者は保守党の党首としてキングとは、首相を交互に務めた人物で、映画では嫌味っぽい尊大な人物として描かれている。また、後者はキングの学友でジャーナリストであり、出席したパーティで凍った川に落ちた友人を助けようとして溺死している。映画では生粋の優男かつ正確イケメンとしてキングの前に降臨し、次期首相と目されてキングの夢を無意識に摘み取っていく役割を負っており、溺死のエピソード("What else can I do?"という最期の言葉まで)を再現する。