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僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46のpicaruのレビュー・感想・評価

5.0
【もがき続ける少女たちの話】

『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』

平手友梨奈さんが好きだ。
だから、どうしても観たかった。
欅坂46のことは何も知らない。
それでも、鑑賞前に詳しい映画館スタッフにいろいろ教えていただき、楽曲を聴き込んだ。
何度も何度も同じ曲を再生した。
MVを観て、メンバーの顔と名前を覚えようと必死になった。

映画への期待は日々膨らみ、ソワソワしながらシアター内へ。
“アイドルのドキュメンタリー”を観ようという感覚は全くなくて、“たったひとりの少女の生き方”を見つめるつもりで挑んだ。

──幕が上がる。
彼女たちが映し出される。
響き渡る音の激しさに、ライブビューイングの感覚にもなる。

出た……出た……!!
冒頭5分で釘付けになり、心臓を騒がせながら目に涙が滲む。
これはすごいものに出逢ってしまったぞ……
こういう直感が外れることはない。

強烈なデビューを果たした欅坂46。
アイドルとして類を見ないビジュアル、パフォーマンス、そして、スタンス。
そんなグループの不動のセンター・平手友梨奈。
彼女が登場するたびに鳥肌が立つ。
表情、動き、どんな些細な変化でもいちいち痺れてしまう。
圧倒的存在感。
“華”よりも強く鋭い“閃光”。

こんなに炎が似合うアイドルは他にいないだろう。
むしろ、炎のほうが負けてしまう。
真っ赤な火花をバチバチと解き放っている。
かつて、か弱さ、儚さの象徴だった少女は、真実を訴える。
これが、僕たちのリアルなのだ、と。

映画をたくさん観ているせい?
平手友梨奈さんがソロパートを踊るシーンの撮影中、モニターをじっと見つめる他のメンバーたちの視線にグッときた。
和やかな雰囲気でメンバーがMVの撮影を進めている中、映し出された孤高の彼女の背中に息を呑んだ。
言葉よりも多くを語ってくれる姿。
そこにはきっと本音が隠されている。

彼女はどこへ突き進んで行ってしまったのだろう。
私たちを置き去りにして。
いや、置き去りにしていることにも気付かずに。

自分の感性では決して届かない才能の結晶。
嘘はいつも虚ろであるとは限らず、真実は純潔だけでは語り得ない。
観客に求められるのは、最後まで見届ける覚悟だ。

平手友梨奈は間違いなく櫻坂46を創った。
同時に、欅坂46は平手友梨奈を創っていた。
誰が欠けても、彼女たちは彼女たちになれなかった。

東京ドーム公演のラスト。
数万人の前でたったひとり、平手友梨奈さんが歌った『角を曲がる』。
涙なしで観るなんて無理だ!!
無理だよ……
彼女の「ありがとうございました」の声がそっと響いたとき、私にはこう聴こえたんだ。

「これが私のすべてでした」

私は平手友梨奈という存在にどうしようもなく惹かれ、彼女の表現にどうしようもなく惚れてしまったのだ。
もう、後に戻ることはできない。
だから祈る。

どうか、月の下で踊っていた少女たちが太陽を見上げられる世界がきますように。

──幕が下りる。
シアター内が明るくなってもすぐに立つことができず、足をガクガクさせながら出口へと歩む。
こんな映画が現れるとは。
映画館を出た後、いつの間にか暗くなっていた空に浮かぶ月が異常に綺麗だった。
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