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大怪獣のあとしまつのsomaddesignのレビュー・感想・評価

大怪獣のあとしまつ(2022年製作の映画)
2.5
そんな怒らなくてもいいじゃない

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人類を恐怖に陥れた巨大怪獣が、ある日突然死んだ。国民が歓喜に沸く一方で、残された死体は徐々に腐敗・膨張が進んでいく。

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不満やダメだとおもった事をつらつら書いてたら、膨大な文字量で真っ黒い呪詛めいた何かになっちゃったので全部消した。決して悪いトコばかりではない作品だと思うので、ちゃんと面白がれたトコを残したい。

一流どころが揃った特撮や、大怪獣の造形が素晴らしかった。破壊された街並みや、夜でも明かりの灯らない一帯の風景から被害の大きさが分かるし、どれだけの人の生活が壊され人生が狂ったか。終わりの見えない避難生活は、コロナ禍の現況に似て悲痛なものがある。

山田涼介の実直で裏表のない存在感がいい。ボケ役にもツッコミ役でもない、笑いにあんまり関与しないせいか、この映画を見進めるよすがのような存在だった。あと天才スナイパー役のSUMIREもボケがなくて、純粋に軍人としての優秀さがあってカッコよかった(ライフルでミサイルを撃ち落とす件については無理があるけども)。

特殊車両や小道具・衣装の作り込みがカッコいい。特務隊や国防軍のものだけじゃなく、閣僚たちの衣装も絶妙。サイズ感や色感覚でモデルがなんとなくわかる。ストーリーの不真面目さに対して、小道具の大真面目な作り込みが笑えるやら、痛々しいやら。


一時ネット上の評判では「令和のデビルマン」と酷評されてたけど、実写版「デビルマン」ほどには酷くないと思う。少なくとも中盤まではそれなりに楽しめた(途中で帰るお客さんがいないだけマシだと思う。「少林○女」や「SpaceBattleShip ヤ○ト」を見た時は、終映後10人も残らなかったもの)
「Don’t Look Up」みたいな狂騒劇だけど、いろいろと架空の設定にしちゃったせいでなんだか色々勿体無い。中盤まではそれなりに面白かったし、諸外国の言いがかりはホントにありそうで笑った。

のっけから「deus ex machina(デウス・エクス・マキナ)」って示唆されちゃうので、最後に大どんでん返しがあることが暗示されちゃう。どんでん返しな超展開があるのを分かってて見せるって難易度高すぎやしないか。

土屋太鳳が単に気の多い女性に見えた。政権中枢に近いエリートの旦那もキープしたいし、イケメンな元カレとも関係を復活させたい。公益と私益をすり替えたり、ただ自分の欲求にだけ正直な人のよう。感情移入しにくい!
ついでに濱田岳の雨音夫妻W不倫要素がそもそもストーリーに必要だったか疑問。ただ観客の神経を逆撫でるためだけの要素では。

伊丹十三にとっての宮本信子のような、三木聡監督のミューズふせえりの面白さ。たぶん世界一ふせえりを活かせる監督なのかも。今回は面白さを過剰に引き出そうとしすぎて、上滑りしちゃってたけど。

三木聡監督の作風は好きだけど、もっとこう…好きな人だけこっそり見るタイプの作風なんじゃなかろうか?好事家向けに深夜ドラマやミニシアター、レイトショーであれば、ここまで大炎上しなかったような。こんな大規模予算の大掛かりな映画向きの作風じゃないことを自ら証明してしまった感じ。


11本目
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