持て余す

望みの持て余すのネタバレレビュー・内容・結末

望み(2020年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

石川家まじ大変。

家族間のコミュニケーションって非常に危ういバランスの上に成り立っているし、同様に真っ当な暮らしなんてものも、努力や倫理などではなく幸運に支えられているところは大きい。だから、SNSなんかで運のいい人たちの清潔な言葉を見ると、反吐が出ちゃうね。

この映画では、まっとうな成功者の健全で正しい家庭が、目立たない綻びから崩れていく瞬間が描かれていて、とてもしんどい。この躓きのきっかけは石川規士の近くにいたバカの理不尽な暴力なのだけど、これを回避するのはなかなか難しい。ただ、それでも挫折しない未来もあった筈で、やはり運の要素は大きい。

普段からなんでも相談する親密な親子関係を築けていた(この親子はそこそこ親密だったと思う)としても、だからこそ1人で抱えたりすることはあるだろうし、怯懦に反発する気持ちがあればやはり1人で解決、解消しようとしてしまうのではないかとも思う。親に頼るのが習い性ならば、すんなり解決していたろうけど、それが健全だとは思えない。

すぐに親に頼らなかった規士の印象は、物語の大半の時間マイナスになるように展開されていて、だから、彼も彼の家族も被害者以外のなにものでもなかったと解っても、気持ちが切り替えられずにすぐに腑に落ちない。これは、規士が生きていれども加害者なのか、被害者ではないけれど死んでいるかもしれないというところに、サスペンスの焦点が合っていたから仕方のないところではあるけれど、少し勿体ないようにも思った。

これが、加害者の線は消えて、なんとか生きていてくれというルートがあれば、結末に悲しみはあっても、消化不良にはなりにくかったと感じるけど、それだとキレイ過ぎるかな。

物語の説得力はとてもあって、家族の距離感や煩わしいマスコミ、理由はあれども頑迷に過ぎる老人たちなど、とても地に足ついていたのだけど、一点松田翔太演じる内藤だけがなんだか虚構味が強かった。実際にああいう他社と群れずに深い記事を書こうという記者だっているのだろうけど、そもそもあの登場人物が作品の出来に大して影響しているとも思えず、なんだか違和感。

そうしたところも、物語としてもそうだけど、全体的な完成度としても少しスッキリしないところが残るのだけど、堤監督の当たり外れ(好みの問題だけどね)の大きさを考えると、こんなものかとも思う。

ところで、あのクラスメイトたちは健全過ぎてまったく信用できなかった。わたしは心が汚れてる。反省しよう。
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