慶

望みの慶のレビュー・感想・評価

望み(2020年製作の映画)
3.8
愛する息子が失踪した。
うちの息子は殺人事件の加害者なのか、被害者なのか?

加害者と被害者のどちらかでしかないのであれば、加害者ではあって欲しくないと思う父。加害者側でいいからとにかく生きていて欲しいと覚悟する母。

どちらの気持ちもわかるし、どちらでもあって欲しくない。で、果たしてラストは?
息子はどちら側だったのか?

ラストに向けて家族の心情が乱れていくのが辛すぎた。自分には子供はいなけれど、子に対する親の無償の愛を感じられる物凄くリアルで胸が締め付けられるストーリーだった。

現実にも、きめつけや噂を頼りに記者や報道陣らが親族に詰め寄り、視聴率目的だけの心ない報道番組をよく見かけるが、本当に気分が悪い。事実だけを伝えればいいし、なんなら事件によっては伝える必要もないこともある。
SNSだってそうだ。実名や住所を晒して個人を追い詰め、その自分の行動を正義だと気持ちよく感じる人がいる。家の壁に「人殺し」「死ね」などと落書きする人がいる。とても不愉快だ。

そんな現実がとてもリアルに描かれている。


とにかく両親演じる石田ゆり子と堤真一の演技がとても良くて、とても素晴らしくて、感情をゴッソリもっていかれた。


終始重い気分な内容だけど、フィクションというよりは、いち殺人事件に巻き込まれた家族のドキュメントのように、いつでも身近に起こりそうなお話なのですごく見入ってしまった。


見方を変えれば、例えば失恋だとか仕事でツラいとか、人間関係の悩みだとかあっても「この家族のツラさより全然マシ」と前向きになれそう。


全国の連絡取れない息子たちよ、夜遊びはほどほどにしてこの映画を見よ。
そして親の愛を知れ。
慶