りっく

アイヌモシリのりっくのレビュー・感想・評価

アイヌモシリ(2020年製作の映画)
3.7
脈々と受け継がれてきたアイヌの文化や伝統。それを観光客のためにある種の見世物化・エンタメ化・産業化させる中で、時代にそぐわない風習や因習は覆い隠そうとする。本作が描いているものは、決してアイヌ固有のものではなく、地域に根づいた伝統や文化を、現在の視点や当事者たちの視点で多角的に相対化してみせる。

その中で軸となるのは、そんな伝統や文化と距離を置く少年の「ここではないどこか」を渇望する眼差しと、そんな自分の中にも伝統や文化の脈々とした血が流れていることを自覚するアイデンティティの問題だ。可愛がって育てた子熊を殺し、命を神様に贈り返す行為は、通過儀礼にも似ている。それらの要素を簡潔かつ静謐に綴ってみせる。
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