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ミッチェル家とマシンの反乱のLCのレビュー・感想・評価

3.9
面白かった。

主人公家族が一貫して「変人一家」と言われるし、本人たちもそう言うんだけれど、クレジット画面で様々な家族写真を見ると、主人公家族がたくさんいるように感じられる。
選ばれた誰かのお話ではなく、理想とは距離のある凸凹家族の一員、そんなみんなの物語。

周りとは違う、とはいえ、気の合う弟さんや仲間に出会えて、主人公は幸運だった。興味関心や感情を分かち合える他者がいた。
他者とそれらを分かち合えるのは、主人公が人付き合いのスキルを磨いたからこそだろう。凸凹家族みんなの日々の結晶と言えるかもしれない。
弟さんはまだおっかなびっくりだけれど、ドライブの一部始終を見るだけでも、きっと忍耐強く他者と関係を築いていけると思える。
時には興味のない話を延々と聞く時間もあるし、いつか意見の食い違いが発生することもあるだろうけれど、投げ出さずに向き合う姿勢を示してくれる人たちが近くにいるから。
日々は忙しく過ぎていくので、なかなか向き合えない時間も多いものだけれどね。主人公と父親さんのように。

ロボットたちが犬と豚と食パンで混乱する様子は面白かった。
色んな犬がおるんだけれど、彼らの持つデータの中に一致するものがなかったんやな… 自分の中にあるデータに一致するものがない時エラーを吐いてしまうのは、ロボットらしさでもあるかもしれないけれど、人も大して変わらないようにも思う。
捨てられて気分を害したり、おちょくった相手をバラバラにしたり、ちょこちょこ人っぽさが窺えるから、やっぱりあんまり違いはないのかも。
火花散っちゃうところはとても機械っぽいけど、愛嬌は抜群。
ただ、幼少の頃から絆を築き続ける年月の積み重ねは、作中のロボットさんたちにはないものかもしれない。
そして人を入れた箱に「食べ物も娯楽もある」と言うけれど、トイレはなさそうなところも、ロボットさんならではなのかな。排泄の必要がない者の設計というか。

誰にも楽しんでもらえない作品が、どこかで顔も知らない誰かを笑顔にしたり、面白いと評価してもらえたりする。
それって心底嬉しいことだろうと思う。ただ、どうしてもその存在は見えにくいんだけれど。見えないだけで、どこかには存在する、そのことを知っているか否かは、主人公本人よりも、彼女の家族にとって支えになるのかもね。
父親さんも、自分の感性では楽しめなかった。でも、娘の作品は誰かにきちんと届いている、と認識できたからこそ、彼女を応援することに自信を持てた。
傷付いてほしくないから守ろうとする気持ちもわかるんだけれど、その姿勢そのものが相手を傷付けていたりするのは、あるあるなのかもしれない。傷付いた相手は、心を閉ざしてしまう。娘さんは、そういうわけで家の外に居場所を探したわけだね。

母親さんも劣等感があったんだろうけれど、忍耐強く家族に付き合う。
理想の家族像はあっても、自分の家族から目を背けることはしなかった。愛があるから、と言うことは簡単だけれど、苦しかっただろう。
家族って本当、色々あって大変。
色々あって大変なんだけれど、いつか笑って話せるようになったら、それは素敵なことかもしれない。
それにしたって無双場面はかっこよかったな。我が子の危機を目にして血相変えて戦ってくれる姿は、かっこいい。

わしもわしらしく、好きなことを楽しむ時間を、これからも大切にしたいと思える。
そんな時間を安心して過ごせる場所を、わしも守っていけたら素敵。
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