流出動画によって自分が自分の知らないところで晒され消費される恐怖と不安に取り憑かれ、自身のアイデンティティが揺らぎだす女性の物語。
序盤の演劇ワークショップ(自分とは別の自分を演じることを求められる)のエピソードが、物語の随所でボディブローのように効いてくる。リベンジポルノ被害者たちのセラピーシーンも、この演劇ワークショップの変奏のように全肯定によって自分というものが奪われていくようでなんとも薄気味悪い。
やがて生きるために偽ることを選択した主人公は、着ぐるみの如く他の誰かになるが、ふと見せる空虚な表情に「自分は何者なのか」という疑問は消えることなく、彼女を追いかけて来ているように感じた。
ポスタービジュアルにもある、パックをしている主人公の画にジョルジュ・フランジュ監督『顔のない眼』のエディット・スコブを感じつつ、闇の整形手術シーンも出てきて、安部公房x勅使河原宏『他人の顔』も想起。
また主人公の顔に、やさぐれた岡田茉莉子を感じ、吉田喜重監督『女のみづうみ』を思い出した。ATG的なモノクロ映画。