このレビューはネタバレを含みます
歌集読んだ上での鑑賞
いじめっ子の投げた鞄がプールに着水し、波紋が静かに大きく広がっていく。痛ましいとは分かっていても、このシーンはどうしたって美しい。波紋は善悪を含みプールを越えて登場人物の心へと達する。
異なる時間軸で3人の物語が進む。その誰かが作者ということではなく、それぞれが作者であり『歌集 滑走路』の捉えた世界のようでした。
以下に原作から3首
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暗き青春時代を生きて雨は止むことあらずして濡れているのだ
牛丼屋頑張っているきみがいてきみの頑張り時給以上だ
抑圧されたままでいるなよ ぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ
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いじめの過去に非正規雇用への眼差し、短歌への情熱がそれぞれへと託されている。水川あさみ演じる切り絵作家は創作という点で短歌と繋がるのかな。作中で言及されたフランシス・ベーコン(食べ物でも、哲学者でもない方)の作風に似た構成です。