近年の邦画はほんとに傑作が多くてそれらが新しい光を発している中、
この映画ももしかしたら…と思ったのですが。。。
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連続ドラマが大ヒット。
深夜ドラマなので視聴率は高くて3%でしたけど熱狂的なファンを獲得し、
正月のスペシャルドラマを経て同時に劇場版制作の宣伝もして、秋に劇場版公開!という流れ。
ファンサ映画でした。ファンサービス映画。
西島秀俊の好青年っぷりと内野聖陽の可愛さを愛でたり、
2人がいちゃいちゃしたり仲違いするので癒されたり
ベテラン俳優2人が楽しそうにアドリブしているので笑ったり
笑って泣いてほっこりした気分になりたいんだろうから、そういう映画作ってあげたよ、という映画。
もちろん、それでウィンウィンの関係が結ばれたのならいいですよ。
全体的にはコメディですから
スッキリと笑ってもらおうと思って作った映画を見て
ファンがスッキリ笑ったのならば、それはそれでいいと思います。
しかし、
この映画を見てスッキリ笑えましたか?
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「漫画だったら成立する(もしくはスルーできる)んだろうな」というシーンが多かったです。
漫画は自分のペースで読み進められるしコマのサイズや吹き出しの大きさなど漫画ならではの手法でバランスを保つことができると思います。
特にこの漫画はセリフが長いので、それを俳優さんにそのまま長々と喋られるとウンザリ度が高まってしまう。
美容室の新人男性スタッフが人としてやばいレベルの言動を繰り返すのが漫画でなら我慢できても、映画できっちりやられると辛い。。
しかもこの男が「かっこいい!」「優しいんだね」と周りから評価される流れは、僕以外の観客の多くも「え?」っていうリアクションでしたよ。
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全体的には俳優さんたちが皆さん素晴らしいのでそれなりのレベルに達してしまうのですが、
ハゲいじりのシーンは今なかなか成立させるのは難しいでしょう。。
「息子が連れてくるのが「嫁さん」ならいいけど「男」は受け入れられない……」というのがテーマになっている中で、
主人公側がハゲの人を目の前にして「あんな風になりたくない!」っつって笑いをとるのは、流石に引きましたよ。
「これどうなの??」と引っかかってしまう時点でスッキリとは笑えない。
笑っていいのかわかんないけど笑っちゃうっていうブラックなコメディもあるけど、この映画はブラックコメディじゃないですよね。
泣いて笑ってスッキリほっこり映画なのだろうから差別で苦しんでる側が差別的発言して笑いを取ろうとするのは、ちょっと難しい構造でしょう。
それともブラックコメディだったのかな。。
被差別者も無意識に他者を差別している!という問題提起だったの?
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アドリブ、笑いましたよ、楽しかったですよ。
西島さんの素の表情とか、内野さんのSっ気とか、楽しかったです。
しかし多すぎ。
他のとこがちゃんとできていたなら良かったかもしれないですけど、取りこぼしているとこ掬いきれていないとこも多いのに、このアドリブ笑いの量は多すぎ。
真剣に作っているように見えないんよね。
他がきっちり誠実にできていたならよかったと思いますが。
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ゲイを描くときに濃厚なセックスシーンが必須だとは全然思わないし、
「ゲイ」と「エロ」を離した描き方をしたものがあってもいい。
濃厚セックスシーン=ゲイを描けているって訳でもないので。
で、この2人はキスしない。
契約書に書かれているのか知りませんが絶対にしない。
屋外でキスしないのはわかりますよ。
史朗は特に人目を気にするタイプだし。
ただなぜ家の中でも絶対拒絶なのだろう。。
花見のシーンで、50歳の男性2人がレジャーシート広げて仲良く隣に座ってイチャイチャすることには一切抵抗なさそうなのに、
(↑これの方がだいぶ勇気いりますよ。。)
そこでもキスだけは絶対に拒絶。。。
男同士のキスってそんなにヤなの?って思っちゃう。
そんなに嫌がること?
そんなに画面に映しちゃいけないこと??と思っちゃう。
ネタバレはコメント欄に。。。