かこじ

護られなかった者たちへのかこじのレビュー・感想・評価

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
3.5
被災者たちは、震災と貧困で二度殺される。
生活保護制度が抱える問題を、ミステリを絡めて告発する社会派映画。

たった1%の不正受給がクローズアップされ、本来保護されるべき人々が切り捨てられていく。
テーマは非常に明確で、日本はなんて酷い国になってしまったんだろう、と考えさせられる。

この映画で悪く描かれるのは、生活保護を却下するお役所の人々。
ただ、根っからの悪人ではないので憎めない。
その背後にある制度や政府まで切り込んだ方が良かったけど、ミステリなのでそこまでするのは野暮なのだろう。

阿部ちゃんは亡霊のような出で立ちでも、相変わらず存在感がでかい。
カンちゃん、子供の頃、あの濃い顔を見たら忘れるはずないと思うのだが。

佐藤健は人相悪すぎ。でも、ぐっとこらえた泣き演技は上手い。
あのお婆ちゃんが倍賞美津子と後で知ってびっくり。

千原せいじの不正受者は堂に入ってたけど、こういう1%の人を描写すると、「やっぱり不正受給ってあるよね」って印象になるんだよなあ。
逆に不正受給を糾弾するマスコミを皮肉ってみては、とも思った。

急に説明台詞が入ったり、ポエムになるなど、少し強引でおセンチな脚本ではあるけど、テーマがしっかりしてるので良い。
ただ、エンドロールの桑田佳祐の歌が、最後に全部持っていったなあ。
それだけいい歌ってことだけど。

平日のレイトショーだったため、8人くらい。
でも、場内のほとんどがすすり泣いてたな。
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