最後のシーンで、じわっとこみ上げる嗚咽のような感情。言葉でうまく整理できないけど、大事な何か、でも確実に何かが見事にこの映画で伝わってくる…。
こう言っているそばからまたこみ上げてくるから、すごい。俳優陣は誰もが見事なんだけど、それより映画全体が自分にせまってくる印象で、だからやはり川島雄三監督のすごさなんだと感じた。
当時のシャレている感じの映画のジャケ写は、この映画の本質からはだいぶズレているもので、むしろその対極にあるもの。でも、もしこのジャケ写の象徴するものを強く否定したかったのなら、これでもいい。
この映画では終始、老紳士然とした父親(森雅之)の視線で全てを感じつつ鑑賞していくが、最後にその視線の先にある珠子(芦川いづみ)の姿に象徴されるもの、それが一番たいせつな何かで、乱れたこの世を照らす光であり、心の救いなのかもしれない。
当時のことは知識がないので、よく知らないが、もし、芦川いづみが日活が売り出したい新人女優なんだとしたら、これ以上のものはないだろう。