都部

君が世界のはじまりの都部のレビュー・感想・評価

君が世界のはじまり(2020年製作の映画)
3.8
My name is yours.

関西の田舎町で閉塞や葛藤に息詰まる日々を送る少年少女の鈍色の青春を描く。
思春期の腸を曝け出していく様な話運びが好みで、作中における彼らの叫びの生々しさは思春期特有の青い時期にしか持つ事を許されない痛々しさの価値を理解しているからこそ描ける物であるように思う。
青春といえばブルーハーツ、というのは若干の狡さと安直さを感じたが、そこは感動したもん勝ちさせたもん勝ち。メインの五人が横並びになって取り留めの無い言葉を交わすシーンが好きだ。
琴子のように走り出せない、未来への行き詰まりに直面した彼らがそれでも泥臭くもがこうと考えを巡らせて行動に出、気恥しさを置き去りにしてここにいない誰かに謳う。
青春の様相はこうあるべきだとさえ感じさせる丹寧かつ力強い物語。
副題〜My name is yours〜の拾い方も上手い。
個人的には『君の名前で僕を呼んで』を想起した。鈍重な日々、ただそこに宿る美しさを捉えたような強い画が多く、そういう面でも見応えある映画でした。
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