まめだいふく

沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~のまめだいふくのレビュー・感想・評価

3.0
 ナチスからユダヤ人を救う話。
 もう、その手の映画はいくつも作られてきているはずだが、未だに映画化できるような史実が残っているとは。それだけ悲劇と英雄が多く生み出された時代だったということか。

 もう、感想も他の同じ題材の映画と似たり寄ったりになってしまうが、とにかく、ナチスの非道さに憤りを覚え、彼らからユダヤ人たちを救おうとする人々に敬服するばかり。

 そんな中、本作で印象に残ったのはナチスの将校クラウス・バルビー。ものすごく冷酷で恐ろしい男だが、家に帰るとごく普通の一児の父。我が子の話をするときはついつい頬が緩みがち。できれば子供には芸術に興味を持ってほしいと願う、子煩悩な男。そこだけを切り取ってみると、他の父親と何ら変わらない人物なのだ。
 ナチス側の人間も人の心を持っているという、当たり前なんだけど、なんとなく受け入れがたい事実。非情なだけと思っていたバルビーの、軍人の顔ではなく妻子持ちの顔の描写は、ちょっと複雑な気持ちにさせられた。

 さて、全体を通して良作であることは間違いないが、あくまで個人的な意見として一つ言わせていただくと、説明口調の邦題が気に入らない。『ユダヤ孤児を救った芸術家』なんて、本編を観ればわかることだ。ついでに言うなら『沈黙の』なんて言葉も要らない。おそらく、主人公がパントマイマーだからなのだろうけど、ずーっとパントマイムやってるわけじゃないし、結構喋ってるし。下手をするとスティーヴン・セガールのあのシリーズものと勘違いする……ことはないか。
 まあとにかく、原題のままか、『レジスタンスのパントマイマー』あるいは『レジスタンスの芸術家』でいいと思うのだがなあ。
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