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マグノリアのEyesworthのレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
4.8
【カエル降って地固まる】

ポール・トーマス・アンダーソン監督×トム・クルーズ×フィリップ・シーモア・ホフマン×ジュリアン・ムーアら共演の1999年の群像劇作品

〈あらすじ〉
曇り空のLAの郊外で、死の床にある老人や、その息子、クイズ番組の司会者、その解答者である天才少年らの苦悩が交錯。その夜、彼らの前で、世にも不思議な出来事が起こる…。

〈所感〉
ポール・トーマス・アンダーソン監督の代表作ということで、ちょっと期待しすぎてしまった感があるのと3時間超の大作を自分なりに上手くまとめ上げ、消化できなかったことを考えると正直そこまでだったかもしれない。だが、同じ日、同じ街に住むそれぞれ違った悩みや心の穴を抱える人達の深みのあるエピソードとそれらが偶然が必然かネットワークのように結び繋がっていく世の神秘に魅せられた。映画ならではのオムニバス形式の集大成を見た気がする。トム・クルーズ演じる自己啓発セミナーの主催者フランクの胡散臭さとクレイジーさが思いの外合ってて良かった。ウィリアム・H・メイシー演じる元天才クイズ少年ドニー・スミスの人知れず抱えるコンプレックスや哀愁も良かった。終盤に空からカエルが降ってきた時には、あれ?これってホラー映画だったけ??と思わずDVDのパッケージを見直してしまった。それにしてもあの量はヤバい。カエルは嫌いじゃないと思っていたが、ちょっともう見れないかもしれない。カエル苦手な人は自衛のため絶対に見ないことをオススメします。ただ、その曇りのちカエルの雨は、作中の人々の行動を幸か不幸かカエルことに成功しました。とんでもない出来事が起きているにも拘わらず、そこに作為性はなく、さも偶然ではないかのように見せるデウス・エクス・マキナ的手法による説得力の高さには、カエルではないが舌を巻いた。それにしてもマグノリアは良いタイトルであり、私も好きな花。映画の舞台となるロサンゼルス郊外サンフェルナンド・バレーに、Magnolia Boulevard(マグノリア大通り)という街路があることから名付けられたそうで。作中の言葉のとおり「過去を捨てても、過去は追ってくる」のである。だからこそ今と向き合い、そこで自分なりの華を咲かせようと奮闘する彼等の胸中が自分事のように迫ってくる。カエル降って地固まる。良い映画でした。
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