とっととくたばれ。
ウェスアンダーソンの世界にタランティーノが舞い降りたら、こうなる。
色鮮やかで激しく美しい。
コメディタッチでアーティスティック、
そして何よりもグロテスク。
白い肌と血のコントラストをここまで観ることになる映画はあまり知らない。
観ているだけで、貧血になりそうだった。
血の海、血の波、血の霧吹。赤赤赤。
つい目をひん剥いてのめり込んでしまう、インパクトのあるロシア映画だった。
主人公はある日彼女に頼まれる。
「10代の自分をレイプした父親を殺して欲しい」。
この父親、警察。
そうとは思えないほどの残忍な面を持ち合わせていることが次第にわかるが、どうやら非人道的なのは母除くメインキャラ全員だ。
ハンマーを手に、彼女の両親が住まう家に訪問した主人公。その敵意と殺意に気づく父親。
説明もなく急に始まる二人の殺し合い。
ただの殴り合いならまだ良い。
電動ドリル主人公の脚に刺し血飛沫を撒き散らし拷問するシーンは正直驚いた。
しかし同時にシュールにもうつる。
血の色は黒に近く、非常にリアル...
洋画ではよく容易に手錠をピッキング解錠するシーンがあるがその仕組みの説明もありつつそう簡単に外せない切ない現実"外国製"(ロシアから見た外国製だがどの国のことを指すのだろうか)の説明もあり、あの下りは観た誰しも一旦「脱出できた」と思ってしまうので解説があるにも関わらず些か癪に障りつつ騙されたと、少し笑える。
終盤はどうしてそうなる!の連続で、まるで穴と穴を交差させて編んでゆく吉祥結びの様に殺しあう主人公、その彼女、彼女の父親、父親の友人。
皆到底人間とは思えない。悪魔か鬼か。
唯一この作品の人物とは思えないナイーブな母親の悲惨な運命は見るに堪えない...
どこをどう切り取ってもやはり警察である父親の悪人ぶりは拭えずで最も許されないのは彼だと思う。
タイトルのように「とっととくたばれ!」と思わずにはいられないくらいにはなかなか痛い目に遭ってくれず、くたばらないのがキツい!
話も映像もどれもバイオレンスで満ち満ちておりビビッドな色合いも相まってどのシーンも印象的な作品。
でも最も印象に残るのは主人公。
横からから見た時の変わった鼻の形、バットマンのフーディ。
生き残るのは、不死身の君だけ!
エンドロール含め最後の最後まで血だらけで激しく落ち着きのない作品で、話も至ってシンプルで面白くはないが撮影構図や映像は芸術的で凝っていて挿入される音楽やその使い方もなかなか良い。
しばらくこの映画のことは何回も思い返すだろうな、と思うほどインパクトがありました。
むしゃくしゃしてる人以外にはおすすめはできない。むしゃくしゃしている人にはおすすめできる。あとは血に強い人ね。