都部

恋する寄生虫の都部のレビュー・感想・評価

恋する寄生虫(2021年製作の映画)
3.4
本作のこの荒唐無稽なプロットを成立させているのは林遺都と小松菜奈の主演二人による演技力と存在感で、非現実性を意図するような劇伴の弄び方や画作りの数々も作品の形成の力添えに尽力しているが、真相発覚による物語の転換を迎える後半から映画としての杜撰さや演技頼りな構成の鍍金が剥がれるような落胆感があるため安易に良しとし難い。

前半部分のCGを用いた演出や当人達が抱える精神疾患が過剰なほどに明示されるので、『寄生虫』の設定によりそれらが悲しいかな単純化された節は否めない。作品の主題とも言える設定も四角四面的に取り扱わるため話としての面白味も右肩下がりになる一方で、ドラマチックになるであろう展開にさしたる実感が掴めないまま終幕を迎えるので物足りなさが残るのも気になった。

原作からのカット部分が大きいからという要因も大きくあるが、端的に物語の語り方が薄いように感じるという根本の問題もあり、小規模な物語を地道に重ねるには尺とドラマが足りていない──なので話の結末も呑み込みにくいんだよなこれ……。

作品としての色調を落としてラストシーンの眩さを映えさせるというのは割と素直すぎる演出采配な気もしたが、雑多な人間の群れの中で……というのは本作を通した進歩を一目で理解させる映像作品ならではのものでその点は良かった。
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