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橋幸夫の流行歌を映画化した作品なので映画としてはそれなりだったが、田村正和がペタペタした髪型で、弁当屋に住み込んでいる庶民的な青年を演じているのが見どころ。

　別に芝居が拙いとかいうのじゃないが、橋と田村がいなければ文芸作品として、も少しマシな話にできたような気がする。橋の歌と板妻の倅、田村の売り込みがちょうど良く、あっちの良くてこちらに悪く重なったわけだろう、本来なら見通し明るくない越後出の娘の姉乞い物語だったのを地はその通りにダブル売込み用の明るい能天気な設えに組み合わせた格好の珍妙な代物になってしまった。
　なんだか橋の歌に誤魔化されてしまったというか、話と歌がマッチしておらず居心地悪い。が、その橋の歌も結構だし、田村の古畑警部補そのまんまなおでこのシワも結構だし、なにより越後娘の何に似てると思ったらうちのイヌそっくりな感じも結構で、その姉を探してクニに連れ戻すのも結局姉とのこころの擦れ違いで果たせないものの、姉は姉で貧乏を嫌って身を落した醜業から元カレとの撚り戻しで足を洗えるのかどうか、生き直しに向かい、娘っ子は娘っ子でそんな姉とは気持ちを寄せ合えず、田村とももう一歩進みもせずクニさ帰る人生初挫折という。売り込み２件便乗ヨロシク、明るく終わってねと捻じ込まれたのを嫌な気持ちで背負わされましたと見え見えな展開が却っておもしろいくらいだ。
　全体ほろ苦いのか薄甘いのか、無理な売り込み成功なのか、文芸側の最後打っ遣りで意趣返しなのかよく分からない具合だ。そういえば、うちのイヌの人懐っこいだけが取り柄で何を考えてるかよう分からん感じを思い出す。そんな意味でイヌ度４.０と云いたいが、世間に向けてはどうも。むしろ、商業主義に抵抗する戦う文芸としてちょっと褒めたい。