イトウモ

青い年のイトウモのレビュー・感想・評価

青い年(1964年製作の映画)
3.6
やや蛇足にも感じつつ、結構面白かった。
年下だけど、ちょっとジャームッシュ(『パーマネントバケーション』と『デッドマン』)も彷彿とさせる青春映画。
田舎から越してきて叔父の下宿に暮らす青年が靴の修繕の仕事をしているというのが面白い。リスボンの街も郊外もいかに平坦な場所が少ないかというのが農村や廃墟でデートする若いカップルを見れば嫌というほどわかる。ポルトガルというのが足場の過酷な土地なのだろう。
それでも数少ない平坦な土地に背の高いマンションがあり、彼の恋人はその屋敷の上階に暮らす金持ちの女中をしている。
街を出れば山の斜面が競り上がり、凸凹ととした土の傾斜が確かに標高を上げていくのだが、それと人工的な高層ビルとが対比になっている。主役のジュリオの成功した叔父が彼らカップルを連れて展望台のような場所に連れていくのも「高さ」の話。
一番、面白いのが恋人の女中が主人のドレスをくすねて「女中たち」ごっこみたいなのを始め、そのままマジックリアリズム的なダンスシーンに凸中するところで、この散文的な撮り方がそのまま突き抜けて突然幻想的になるところがこの監督の色と思われる。

そこから急に同時代歌謡曲(ロック)のパーティになる。つなぎが不自然だが、彼女が靴を壊した時に「ロックばかり踊るからだ」と前半に伏線がある。
ややあざといが、セーターを山上から落とすシークエンスもよい。それをぬかるみ(またしても不安定な大地)に踏み入って靴を汚しながら拾うところまでモチーフが丁寧に拾われている。
そこからのクーリンチェ展開までは、それがやりたいのはわからなくもないし、刺される女と落ちるセーターがついになってもいるけれど、やや蛇足で若者の作という感じがする。