クシーくん

ラヂオの女王のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

ラヂオの女王(1935年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ラジオという文明の利器を通じて若い男女の恋が実る、モダンでおしゃれなロマンティック・コメディ。
不仲な互いの父親を説得して早く結婚出来るようにと、貴美子と欽吾の二人でなんとか親を和解させようと奮闘する昭和ロミオとジュリエット。言ってしまえば筋自体はごく単純なものだし、随所にスクリューボールコメディの影響を感じるのだが、ユーモアを交えつつ、ポップで軽快な演出・構成のおかげで観ていて飽きない。
特に、飛行機の爆音で敢えて二人の台詞を入れずに飛び去り、先端機器であるラジオに顛末を語らせる素敵な演出!もっと評価されて良い作品だと思う。

ラジオ放送が国内で始まったのが1925年。本作がラジオ放送開始から丁度10年、一般にもラジオ熱が高まってきたタイミングでの作品という前提で考えるとまた楽しい。
弁士のセリフにBGMをつけるのに大道具をグルグル回して風の効果音、金だらいを引っぱたいてライオンの鳴き声と、現場の工夫で見事なSEを演出するのは「ディズニースタジオ訪問記」でもやっていたが、創意工夫の匠を感じた。

古川緑波率いる吉本興業の芸人が多数出ているのも見どころの一つ。
当時流行の声帯模写を演じるのはおなじみ江戸家猫八やロッパではなく、吉本所属の九官鳥という芸人。動物ではなく赤ちゃんの声帯模写というのは初めて見たがなかなか面白い。
林家染團治&小川雅子の漫才に染團治のゴリラ踊り、それに石田一松の「のんき節」。いずれも貴重な映像ではないだろうか。昭和初期の演芸シーンが垣間見える。
林家染團治&小川雅子は当時大人気の漫才コンビだったようだが、現在では晩年の活動はおろか消息や没年すら不詳。歳月不待、無常を感じる次第である。
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