ペジオ

タイムリミット 見知らぬ影のペジオのレビュー・感想・評価

3.8
「計画的な恐喝」を描いた映画のフォーマットに忠実な映画
金を脅し取られる主人公は当然脅し取られるだけの金を持っているということで、それは即ち清廉潔白ではないという事(金持ちはみんな悪いことしてるに決まってる。)
金目当てかと思われた犯人の目的は実は主人公への復讐だと発覚したり、事件を通して主人公は自らの罪と向き合ったりする
そんな展開はもはや様式美なので良いとして、じゃあどこで新鮮味を出すかといえば、どんな「シチュエーション」で主人公を追い詰めるか…という部分だろう
先述の展開はだいたい後半のキモとして描かれるので、シチュエーションの妙味面白味は得てして前半から中盤に集中する
主人公が自らの置かれた状況を理解していく過程だったり、犯人との交渉や駆け引きだったり…

本作は「爆弾を仕掛けられた車」というさながら『スピード』の様な設定だが、単純に座席から立つと爆発するという仕掛けなので、普通に車は止まったりする
主人公の心理と車の動きが同調しているかの様な演出や撮り方が面白い(最近流行りの長回し風の撮り方は少し韓国映画の『アシュラ』を思い出した。嫌なものでこういうの観ると映像の繋ぎ目を探してしまう自分がいて少し悲しい。)
車の「動く密室」としての側面…車の内部と外部で事件の認識が全く違うという展開にも活きてくる(後から乗り込んだ者を含めて、事件の本質を知っている者しか車には乗らない。寧ろ知っているから「乗る」という展開がなかなか良いよね。)

正直中盤まで(正確に言えばフィルマークスのあらすじに書かれている部分からもうひと展開したくらいまで)はこりゃ傑作だと思ったが、あまりにもフォーマットに対して優等生的な作りなので非常に良く出来た佳作といった感じ
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