アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生のmareのレビュー・感想・評価

思い込みの激しい男、スケールが大きいことが起きているのに実は大したことは何一つしていないというブニュエル節が炸裂。男の下心と滑稽さを死を絡めて見せていく実に奇妙な発想の映画で面白い。数奇な人生に意味を見出しある種の快楽、ナルシシズムに浸る妄想に溺れていき、人を殺そうと決意したときに先を越すようにその人が死んだり殺されたりしていく不条理劇はユーモア溢れ可笑しい。基本的にサスペンスでホラーですら見える瞬間があるのにやっぱりベースは高尚なコメディのように思える。白黒だからなのかマネキンをアップで映すシーンはリアルすぎて普通に怖い。ブニュエルの中でも性格の悪さとキャッチーさのバランスが取れているメキシコ時代の秀作。