アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生の作品情報・感想・評価

「アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生」に投稿された感想・評価

おそらく傑作だが、立て続けにブニュを見たのでブニュ不感症に..また最高のコンディションで見直したい
菩薩

菩薩の感想・評価

4.2
元U-turn土田及びデスノートの元ネタ、アルチバルド・デラクルスの犯罪的人生、又の名をデス・オルゴール、「死ねば良いのに」と願えば次から次へと人が死んで行く残酷無比な悪魔の能力(嘘)。とまぁ詰まる所この作品のテーマは至極単純、要因の有る無し問わず、人は死ぬときゃ死ぬ、それ以上でも以下でも無いと思う。アルチバルド・デラクルス氏は自らを「犯罪者」であると自慢気に語るが、別に彼が何か手を下した訳では無い、ただ「死ねばいいのに」と願った相手がタイミングよくその瞬間に死んだと言うだけである。誰もが「犯罪的人生」を生きている者であり、誰もが心の中には邪悪な願望を抱き、犯罪者となり得る素質は有している、それが人間と言うものさ、とブニュエルは高笑い。ただこの場合その達成感は性的快感にも近く、また綺麗な脚を有する女性ばかりを、と言うところがブニュエルの変態性だろうか。俺もあのオルゴールを手にする事が出来れば…おそらく地上から半数以上の人間が消えていく(俺含め)、俺氏の犯罪的人生は惨めで少しばかり長い。にしてもなんとも語感の良いタイトル、『メルキアデス・ストラーダの三度の埋葬』以来だ。オルゴールの上でバレリーナは踊り、脚で操作するろくろは回る、人の運命もまた踊り、生命は循環する。
あぺ

あぺの感想・評価

4.4
普通のフィクション映画だったら非現実的なことが起きても大抵はその虚構の中で裏付けが取られているんだけど、ブニュエルの映画には最後までそれがない
例えば椅子が勝手に浮いたりしたら、それは幽霊の仕業でした的な根拠的なモノがあるけど、ブニュエルにはそうした種明かしは何もない でもそこに違和感を感じないし、ブニュエル作品の虚構の中の現実が捻じ曲がっているような感じがしてならない
多分これが超現実っていうやつなんだろうけど、シュールレアリズムが理解できない僕からしたらまだ曖昧な概念にしか捉えられていない
ただブニュエル作品が面白いことは間違いない

あとラビニアが勝手にアルチバルドの家に観光客を招き入れるショットはリュミエール兄弟の工場の出口にそっくりだった
pika

pikaの感想・評価

4.5
あー面白い!ホント面白い!!
ブニュエルによる「したいけどできない」映画の一本で、今作は「殺したいけど殺せない」男の話。

他の「したいけどできない」作品は生存欲求だったり本能だったり現状脱却だったり、求める理由を状況から読み取るものであったが、今回はキャラクター発信のフェティシズムなどの欲望を解消するドラマになっていて、コミカルでシンプルな構成ではありつつもブニュエル後期の性的倒錯に近いものがある。「欲望のあいまいな対象」や「昼顔」など。

少年時代に家庭教師が目の前で事故に遭って死んでしまった過去から「人を殺したいと願った自分に興奮する」と言うフェティシズムが芽生え、過去の事件の際側にあったオルゴールを古物商で見つけた時、忘れていた殺人欲求を思い出し、それからと言うもの自分が「殺したい」と願った相手が次々と死んで行く展開に自分が彼女たちを殺害しているのだと思い込むようになる。足へのフェティシズムもオプション付けてくるあたりはさすが。

なんてことはない妄想と現実の入り乱れな娯楽作なんだけども、ソックリなマネキンを相手に見立てて欲望を解消しようとしたり、様々な女性との出会いや衝動、計画から失敗までの流れがコミカルながらも緊迫感もあり、アルチバルドの淡々とした衝動が可笑しくて前のめりになって夢中になる面白さ。
殺人欲求が叶わぬまま相手が死んで行く展開は、普通の人たちが些細な違反や犯罪スレスレな行為などを行ってしまう罪悪感、犯罪を犯してみたいという好奇心や性的欲求などの妄想による背徳感まで、罪を犯すまでは行かなくとも潜ませている欲望を突くような、否定や肯定をするでもなく「みんな多少なりあるでしょ」と誰しもが持つ本能だとばかりに娯楽作へと昇華しているブニュエルの視点やアイディア、演出力に感嘆する。

ラストの取って付けたようなエンディングなんかもイヤらしくもたまらない感じで、娯楽作だからこう終わればこんな内容でもオッケーっしょ!?とでも言っているようなブニュエルらしい皮肉にニヤリとさせられる素晴らしい後味。傑作!!
少年期のとある出来事をきっかけに、綺麗な脚の女をどうしても殺したくなるという性癖をもってしまった裕福な家の嫡男アルチバルド=デラクルス。何人もの美女を手にかけようとするが決まっていつもその直前に彼女らが勝手に次々と死んでしまう。殺したくても殺せない!満たされない欲求と二面性に苦悩する男の物語。
稀代の脚フェチ監督ブニュエル本領発揮。
冒頭部の見事なショットの連鎖で、活劇作家としての才能の高さを見せつける。「乱暴者」みたいな職人に徹した作品をもっと観たいと思わせる。
マ

マの感想・評価

4.4
面白すぎる。「殺したくても殺せない」男の回想形式で物語は進んでく。
殺人を夢想しながらもいつも直前でそれを果たせない主人公の男が途中から愛らしく見えてくる。大事に剃刀ケース(曜日ごとに分けてるから七本入ってる)を持ち歩いてるのとか、殺人を妄想してるだけで気持ち良くなってるのとか、俳優の顔つきもあって素晴らしい変態っぷりである。マネキンをあれこれするシーンは笑いが止まらなかった。
ゆるゆるなテーマソングみたいなのもバッチリおかしなムードを作ってて良かった、終わり方もそれで良いのかという感じ(でもやけにゴージャスな音楽が流れて、普通にいい曲で感動してしまった)。緩くてぶっ飛んでるこの感じ、たまらなくブニュエル印で最高だった。面白かったから点数は高め。
冒頭のナース死亡シーンはどこかアルジェントっぽさがある。

マネキンを燃やすために焼却炉まで引っ張っていくときに、ゴトッととれる脚。
ブニュエルの脚への執着が窺える。

というか、ラストがある意味仰天で、そんなメロドラマ的な終わり方するのかと笑ってしまった。
秋日和

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3.5
線路を走る玩具の列車やろくろ、そしてオルゴールの上のバレリーナ……これらの小道具が、回転のイメージを映画にもたらしていると思った。人の死を願うとそれが実行されてしまう「犯罪的人生」を歩む羽目に陥った主人公が、グルグルとその運命から抜け出せないように、幼い日に植え付けられた死の記憶と共にオルゴールはメロディを奏でながら回転する。
一方、脚を印象的に捉えた映画でもあった。主人公が初めて遭遇した死と結び付けられる家庭教師の脚や、自動車事故のせいで脚を引きずるように歩く女にハイヒール。極めつけはボトッと外れるマネキンの脚だろうか……。この映画に於いて脚は、死と切っても切り離せない関係にあるのだと思う。
回転のイメージによって犯罪は繰り返され、脚のイメージによって画面に艶めかしさが与えられる。出逢い/再会が劇中で何度か繰り広げられるのも、そこに脚が欠かせないのも、全ては主人公=アルチバルド・デラクルスが「犯罪的人生」を望んでしまったからだ。その人生から抜け出すには果たしてどうすればいいのか、もしやとんでもない絶望が待ち受けているのではないのか……と、期待して観たはいいのだけど、ブニュエルの出した答えのあまりの呆気なさに面食らってしまった(『エル』や『忘れられた人々』を撮った監督と同じ人とは思えない……)。けれど、あのラストの後に更なる再会が待ち受けていたら、と妄想すると少しだけゾッとする。