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TITANE/チタンのsomaddesignのレビュー・感想・評価

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
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すごいラストシーン。
いやいやいや、無理無理無理wwってなった

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不慮の事故によって頭にチタンプレートを埋め込まれた少女アレクシア。それ以来、彼女は車に対して異常なほどの執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになってしまう。

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予備知識ゼロで鑑賞。
予告編はおろか、ジュリア・デュクルノー監督の前作「RAW 少女のめざめ」を見よう見ようと思って見逃したまま鑑賞。

「めっちゃ面白いけど、なんじゃこりゃ!」が正直な感想。
とても面白いけど、理解がおっつかない。
スリラーかヒューマンドラマか、はたまたホラーかカテゴライズすら難しい。
あえて似たような映画を上げるならスティーブン・キング原作の「クリスティーン」とクローネンヴァーグの「クラッシュ」と塚本晋也監督「鉄男」かしら?
連想される作品はあれど、ともあれこんな映画見たことねえ!
(2021年第74回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞に際して、審査員長を務めたスパイク・リーがいう「こんな作品、見たことがない」がホントそれ)

予告編すら知らずに見たせいもあろうだろうけど、ホント自分がどこに連れて行かれるのか分からない映画体験。行き先の分からない列車に乗せられてる気分。次々と予測不能の出来事ばかり起きるので、久しぶりに自分が映画に何を求めているのか再確認できた気分。「普通ありえないショッキングと、ぜったいに体験し得ない物語を追体験するために人は映画を見るのだ」って当たり前のことに気付かされたよう。

前半と後半で全く違う映画。通底するテーマは感じつつも、なんて言語化していいか分からん。監督自身も仰ってるように、主人公に感情移入して観るタイプの作品じゃない。観客はカメラを通じて、次々起きる事態に振り回されるばかり。
アレクシアが抱えている問題や、孕ってるものがなんのメタファーか読み解こうと思えば、それらしい輪郭だけが浮かんでくるけど、今作はそういう賢しらな理解や分析を拒否してる気がする。どれだけ詳細に作品を切り刻んで、要素を一つ一つ摘み上げて分析しても全体像の理解には及ばない。表層と深層の両方を含めた全体から醸し出させる全てを味わうに尽きる。


乳首の金具に髪が引っかかたり、消防署員たちがうっかりアレクシアのダンスにうっとりしちゃうシーンが笑った。自分達の繋がりが一皮剥くと幻想だと自覚しちゃう瞬間だし、ヴァンサンがステロイド注射しながらも威光を保とうとする家父長の幻影に繋がる。前半と後半で全然違う映画になる構成や、後半の失われた幻影を追いかけちゃう男の物語はヒッチコックの「めまい」っぽい。

フェミニズムでもなければ、ミサンドリーでもない。なにやら軽々な理解を拒否した筆致。狭苦しい世界(肉体)から解放されて、新しい世界や関係性を見出すオチがビックリドッキリ。
ものすごいラストで、誰が見ても意外な着地なのに後味が悪くない。むしろ理解不能な元気がもらえるポジティブさが気持ちよかった。

「RAW」も見なきゃ。


27本目
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