カンヌ国際映画祭のパルムドール受賞作。
いやあ、前情報を一切仕入れず見たので衝撃的な映像や話の展開にお腹いっぱい。ホラー要素、グロ要素、ある意味、性倒錯的なテーマをも含んだこういう作品に金賞を授けるカンヌ映画祭の懐の広さにも感心。
中盤以降の展開を書くとネタバレになってしまうが、交通事故の頭部損傷でチタンプレートを頭の一部に被せられたヒロイン役を演じたアガト・ルセルなる女優さんの、文字通り、体当たりの演技に圧倒された。中盤以降の展開でもある程度説得力がある独特の容貌で、台詞は少なめながらも顔の表情、身体の動きでキャラクターの心情を余すところなく体現できているのは、実にお見事。
同じ監督の前作「RAW~少女のめざめ~」は、今作同様の独特な映像美はあったものの、あまりにもストーリーのテンポが遅く個人的にはハマらなかったが、今作はテンポも良い感じで驚くべき展開が次々と見られて好きな作品となった。
個人的な白眉は消防車の上でのダンスシーン。また、Je t'aimeというフランス語の「愛してる」の言葉がこれほど効果的に深く突き刺さる作品も久々。
所々、見ていて痛くなるシーンもあるし、冒頭部分で何故にヒロインは殺人を繰り返すのか?と分かりづらい部分もあるにはあるが、映像美と勢いで押すストーリー展開で、さほど気にはならなかった。